「よっばれて・とっびでて・パンプリーン♪ っていうか帰ったばっかなのに呼び出さないで下さいな。では願い事を一つどうぞ。今度はスピーディーなものでお願いしますね」
すでに説明は必要なし。むしろ一秒前の今で今度は何かと思ったら。
「俺たち、あんたのいる世界で暮らしたいんだけど」
「うっわーチャレンジャーですねぇ、お三方とも」
真面目に言ったのに何故だか笑顔で返された。
うーん健康的なその表情の一端を担ったものとしては嬉しいことこの上ないんだけど。
美形さんたちを侍らすのはものすごく楽しそうなんだけど。
でもさ、それも多分アルバイターの規約に触れると思うんだよね。
っていうか私、違反ばっかりしてないか?
いやでもそれが私の宿命な気がしなくもなくもないような気がしなくもない。
・・・・・・・・・つまりどっちだ?
アルバイター魔女っ子(ガンダムSEED連合トリオ編後日談)
三ヶ月検診で来てみたら、オルガさんもクロトさんもシャニさんも、三人とも『γ-グリフェプタン』の禁断症状はほぼなくなって、なんかよくわからないけど三隻連合とかいうのに参加していて、戦争は無事じゃないかもしれないけれど停戦していた。
本当は体調が弱ったときのみ変身するのだけれど、そこは製作者の特権ということで裏技を使い三人をそれぞれ動物に変化させ、写真をバシバシ撮りまくった。
今回は長期バイトだったなぁ。あぁでもこれで終わるや。気が楽になる。
そう思って笑顔でさよならを言ってホグワーツに戻った。
そうしたら三秒も経たないうちにまた召喚された。
しかも同じ場所。人はこれを二度手間と言う。
そして今回呪文を唱えたシャニさんによると、彼らの願い事はこうらしい。
『私のいる世界に来たい』
あー・・・このアルバイトってひょっとして願われたらその人の介護までしなくちゃいけないのかなぁ。
うっわそれはかなりの長期任務になるんじゃないの? むしろ養ってくれと言われたら養わなくちゃいけないのか?
あぁでもそういう人はブラックリスト入りするからな。魔法に頼って自堕落になってしまうマグルは、いつの時代もいるみたいだし。
「えーとですね、それはシャニさんだけじゃなくクロトさんもオルガさんもご一緒に?」
「別に・・・・・・俺は一人でもいいんだけど」
「バァーカ! 抜け駆けすんなよ、シャニ!」
「ここよりかは、おまえのいる世界の方が楽しそうだしな」
「いや、私の存在で決められても。こっちの世界にも戦争やテロはあるし、特に私の属する魔法界なんかヴォル様が暗躍するブラック無糖な危険地帯ですよ? まぁホグワーツはダンブルドア校長先生の直轄地だから安全といえば安全でしょうけど」
でもリドるんがいるし、ルシウスさんも出入りするし、ヴォル様の気配がなくもない上に私自身ブラックなのかもしれないけれど。
というかアルバイターで違反していることを魔法省に申し出てない時点ですでに犯罪者? うっわ、自覚なかった。ごめんなさい、お役人様。
「シャニさんたちも停戦したことで、これから色々とするべきこともあるでしょう?」
あぁでも母艦であるドミニオンとやらは大破してしまったらしいけど。
こんなことなら、前回の召喚時にアズラエルさんとやらに会っておくんだった。絶対楽しそうな予感がしたのに。
ついでに美人な艦長さんとやらにも会っておくんだった・・・・・・!
「でも僕らに出来ることってほとんどないよ。プラントにいけば元連合のパイロットってことで死刑にはならなくても一般市民からリンチされるだろうし?」
「理性と感情は別物ですからねぇ。ついでに加害者被害者第三者も」
「かといって連合に戻ってもCPU扱いで経歴削除、戸籍もない。どうせ『γ-グリフェプタン』ごと処分されるのが関の山だ」
「じゃあ戸籍を作りましょうか? 真新しい第三者のものを」
「やだ。あんたと一緒がいい」
「シャニさんは不思議なことを言いますねぇ」
むしろ動物に変化できる人間として一躍サーカスの花形とか飾れると思うんだけど、興味はないのだろうか。
居住地は転々としちゃうけど、正体を隠すにはもってこいだと思うし。
興味ありませんか? そうですか。
あぁ、うーん、えーと。
シャニさんたちの希望は、きっと『隣の芝生は青い』なんだろうけれど、でも願われたら叶えるのがアルバイターの基本なわけで。
でも大の少年三人を養えるほど私は裕福でもないし、むしろ自分で使うし。
三人とも自分で稼いでくれるかなぁ。ペットモデルとかしてくれれば一躍大金間違いなしなんだけど。
世界を移すってことは、つまり私の世界で生きていくってことだよね。
私の世界では『働かざる者食うべからず』って諺もあるし、それを最初から鉄則として突きつければ大丈夫かな。
そうだよ、別世界ってことは異世界なのであって、異世界では個人の所持している常識が通じないことは不破が証明してくれている。
故に躾けることは可能!
「オッケーです。でもまぁ想像と違うことも多いでしょうから、とりあえず一年契約ということで」
その間にペットモデルとして稼いでもらいましょう。大丈夫、マネジ代を頂くだけで、ちゃんと皆さんにも分配しますから。
緑のパンダとかオレンジのウサギとか、CMでめちゃくちゃ起用されるだろうなぁ。オルガさんの毛並みもそんじょそこらのゴールデンよりキラキラだし。
研究所に連れて行かれることにだけ気をつければ、後は大丈夫、オッケーオッケー!
「マジでいいの!? やった!」
「大したもてなしは出来ませんけれど、長期留学とでも思って頂ければ」
「そうと決まったらさっそく出発だな。カラミティとかは置いてっていいだろ」
「あ、私、欲しいです。是非とも頂いて買い物用チャリに」
「じゃああげる。フォビドゥン、可愛がってやって」
「僕のレイダーもあげるよ。もういらないし」
「ありがとうございます」
杖を取り出して一振りし、並んでいた巨大ロボットさんたちを小さくする。
プラモデルよろしくになったそれらをローブに入れて、私の方は準備万端。
「じゃあ伝言がある方はどうぞ伝えてきて下さい。服とかはこっちの世界でも準備できますけれど、どうしても持っていきたいものがあればどうぞご遠慮なく」
「あ、待ってて! ゲーム持ってくる!」
「俺も・・・・・・MD取ってくる・・・」
「本はそっちの世界にもあるのか?」
「ありますよー。私が持っているのは趣味が高じてブラック系統ばかりですけれど、図書室の蔵書はバラエティに富んでいますし」
絵本から百科事典まで何でもござれ。個人的には禁書がオススメ。
そう言うとオルガさんは一つ頷いた。だけどお気に入りの一冊は持っていきたいとかで、他の二人に続いて廊下を走っていく。
三人の姿が見えなくなって、私は肩を落とした。
あぁ、またしてもアルバイター規則違反だ。今更どうってことはないけどさ、やっぱりごめんね、お役人様。
その分普通の願い事を完璧にこなすから、どうか気づかないでいておくれ。
つーかむしろ見逃してちょうだい★みたいな。
異世界にめちゃくちゃ飛ばされてるんだから、これくらいのアクシデントは本気で見逃して欲しいものだよ・・・・・・。
廊下の向こうから競うように駆けてくる三人を眺める。美形っていいなぁ、目の保養だなぁ。
リドるんがこれ以上ペットを増やすなとか何とか言ってたような気がしなくもないけど、美しさの前にそんな諫言など無意味さ、ハハン。
ごめんね、リドるん。新入りを連れて帰るから育ててやって下さい。
断じてマグルの文化に染まり過ぎない程度に頼む。
うきうきと笑顔を浮かべているオルガさん、クロトさん、シャニさん。
彼らの笑顔が、私のいる世界に来ても損なわれませんように。
出来ればもっとキラキラしますように。日々目の保養になりますように。
心からそう願って、私は元の世界に帰るべく杖を振った。
あぁ、アズラエルさんとやらに会いたかったなぁ・・・・・・。
作中に三つおまけ話へのリンクがあります。
2005年1月24日