ニコニコ笑顔のちょたがいます。
こいつがこんな風に笑うときは碌なことがないんです。
えぇもうそりゃ身をもって知ってますよ。学んできましたよ。
なんたって小学校低学年からのお付き合いですからね。
でもだからといって慣れるなんてことはあるわけないんですよ。
あったら終わりだと思うわけなんですよ。
「何や。と鳳って知り合いなん?」
「はい。幼馴染なんです。―――――――――ねぇ?」
頷く以外に何が出来ただろうか。否。
もう嫌だよ・・・・・・・・・っ!
学園天国(本日はお日柄も良く)
忍足さんとの語らいにちょたと宍戸さんが加わって早数分。
話題はやはり私とちょたの関係についてなわけで。
「ほー。小学校が一緒だったんか」
「そうなんですよ。1年生から6年生までずっと同じクラスで」
「そういえば言ってたな。カッコイイ幼馴染がいるって」
「覚えてたんですか、宍戸さん。そうです。カッコイイでしょう?」
「「たしかにな」」
ハモラないで下さい。そして私を凝視しないで下さい。というか私を帰してください。
これ以上ここにいたら絶対に胃を壊す・・・・・・っ! 大石先輩! 私にも胃薬を!! むしろ睡眠薬でいいから!
・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁでも睡眠薬はダメだ・・・。な、何をされるか・・・!
貞操の心配なんかではなく、ちょたにどうやって遊ばれるかとか、跡部に性転換手術を勝手にやられないかとか、そっちの方が心配で・・・・・・。
というか忍足さんと宍戸さんは私が女だということに気づいてないっぽい。
ちょたも私の名前は呼んでないし、跡部も何も言ってないみたいだし。
うん、男でいいよ。男でいいからさぁ・・・・・・。
「それにしても久しぶり。まさかこんなところで会えるとは思ってなかったけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お久しぶり」
だからさ・・・・・・コイツをどうにかして下さいよ・・・・・・・・・。
ニコニコ笑うな! ちくしょうっ!!
なんで相変わらず怖いんだよ!!??
「跡部部長の新しいナンパ仲間が君だったなんてね。たしかにカッコイイから判るけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「声が聞きたいな」
「久しぶりだね、ちょた。最近はお互いに部活が忙しくて会えなかったけど元気そうで良かったよ。ダブルスでも宍戸さんと上手くいってるようだし、氷帝ってテニスの強豪校だし、そんなところでレギュラーを取れてるちょたは本当にすごいと思う。うん、すごい。カッコイイね。しかも身長もものすごく伸びてるし。いくつになった? 180センチは越してるよな? だけど筋肉もちゃんとついてるみたいだし、力も強くなってるっぽいし、本当に羨ましいよ。いいなぁちょた。いいなぁ。おばさんも最近はお会いしていないけど元気? おばさんの作るお菓子ってすごい美味いからまた食べたいな。そういえばバイオリンは最近弾いてる? この前新しい曲が仕上がったんだけど、ちょたの方はどうよ? あーでもテニスのほうが優先なのかな、今は。だってテニスしてるちょたはものすごく楽しそうだし、好きなんだろ? テニス。あーでも氷帝って跡部が部長っていうのはちょっと頂けないよな。うん。それだけはダメだ」
「はいストップ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分から『声が聞きたい』って言ったくせに」
「喋りすぎ。じゃあ今度うちに遊びにおいでね。母さんにお菓子作ってもらうから」
「スミマセンデシタ」
結構ですとは言えない私がいる。それはもう、操り人形のごとく操作されている私が。
忍足さんと宍戸さんの笑い&驚きの視線が痛い・・・・・・・・・・・・・。
どうせこんな関係を8年間も続けていますよ・・・・・・。というか気づいたらこんな関係だったんだよ、ちくしょう。
あーもう嫌だ。帰ろうかなぁ。
だけど向こうから来た新しい人物にそれすらも阻まれてしまって。
「あれ? 侑士、その子誰?」
「跡部のナンパ仲間で鳳の幼馴染や。っちゅう」
「ナンパ仲間?」
おかっぱさんは首をかしげて。
「なーんだ。てっきり跡部の彼女かと思った」
「「まさか!」」
ちょたとハモッて否定してしまった。
誰が好き好んで跡部と付き合うかっつーの! あんな俺様で金持ちでワガママで顔と家柄と成績だけの男と!!
今までナンパにつき合わされてきてものすごく良く判ってるしな!
世界が半分に割れたって、それで家が引き裂かれたとしても、絶対に跡部とだけは付き合って堪るかっつーの!!
それなの何ぃ!?
私が・跡部の・彼女・だとぉ!!??
何言ってやがるっこのおかっぱ!!
――――――――――――――って。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ちょたを振り向いたら、ちょたは目を丸くしておかっぱを見ていた。
あれ? あれれれれれれれれれ?ってことは、やっぱり?
え? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれぇ?
「跡部の彼女なわけないやろ、岳人。こないな男前捕まえてよう言うわ」
「跡部だって節操はねぇけどホモじゃねぇだろ」
「えーだってこんなに美形なんだし似合ってるじゃん」
「美形言うてもなぁ。かて嫌やろ。跡部と恋人同士なんて言われるん」
「激ダサだな、向日」
「何だと! クソクソ宍戸め!」
何だか会話が流れていってる気がしないでもないんだけど・・・・・・・・・・・・・・。
でも、でもとりあえず。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・よく判りましたね、向日先輩」
感慨深げにちょたが呟く。
まったくその言うとおりだ。ここにも気づく奴がいたとは。
しかもおかっぱさん。あんた跡部よりも上だよ・・・・・・・・・!
「え? 何が?」
丸い目をさらに丸くしておかっぱさんが振り向く。
いや、おかっぱさんなんて失礼だ。ここはやはり向日さんとちゃんとお呼びしなくては。
「いえ、が女の子だってことです。・・・・・・・・・跡部部長から聞いてませんよね?」
ちょたが重ねて聞くと向日さんはフルフルとおかっぱを揺らせて。
「聞いてねーよ。でも一目見れば判るじゃん。たしかに男みたいにカッコイイけどさぁ」
「「いや、判りませんから」」
またしてもちょたとハモッてしまった・・・・・・・・・・。
だって今日はいつもにまして男前な格好をしてるはずだし。ヤンキーだぞ、ヤンキー。
何か、このジャンバーと眼鏡も向日さんの前では無意味だったということか・・・・・・。
忍足さんと宍戸さんには、有効だったみたいだけど。
今もなんだか目を丸くして私を注視してるし。
もういやだ・・・・・・・・・氷帝は視線が痛い・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・自分・・・・・・・・・女、なんか・・・・・・・・・・・・・・・・?」
呆然とした忍足さん。いや、黙ってたわけじゃないんだけどさ。
「はい。実は女なんっスよね、コレが」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホンマに?」
「はい。見た目は男なんスけど、これでも一応」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・せやけと胸ないやん」
「ジャンバーがでかいから判んないだけっスよ。これでも一応女ですから胸もありますし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・触ってもえぇ?」
「―――――忍足先輩?」
セクハラだわ! とか叫ぶ前にちょたがニッコリ笑顔で制裁を加えてくださった。
あー・・・宍戸さんなんか驚きのあまり口をOの形にしたまま硬直してるよ。
そんなに意外なのかなー。私が女なのって。これでも14年間女をやってきてるんだけどなぁ・・・・・・。
どうせ女には見えないよ。女子も黄色い声をあげちゃう美少年顔だよ! 羨ましいだろ! ハハンッ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むなしい・・・・・・。
もう嫌だ・・・・・・・・・。帰るー・・・・・・・・・・・・。
「」
「ゴメンナサイワタシガワルカッタデス」
ちょたの笑顔には勝てない。これ、人生の教訓なり。
というかさ、跡部。
もう本気で帰ってもいい?(つーかよいと言ってくれ!)