携帯電話を解約したいと思う今日この頃。
『今から迎えを行かせる。準備しとけ』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『お迎え』、ありがとうございます」
「ウス」
名も知らぬ初対面の男につれられ、跡部の下へ参上中。
もう嫌だ・・・・・・・・・っ!
学園天国(本日はお日柄も良く)
今日は土曜日で、珍しく部活がなくて、これ幸いと家に帰ってきて、昼ごはんを食べて、ゴロゴロしていて。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴロゴロしていたら、電話がかかってきて。
その電話は当然のごとく跡部からだった。嫌な予感がしたんだよっ! そんときに切っときゃ良かったんだ! それなのに!!
相変わらずの命令口調で『準備しとけ』だぁ!? 何の準備だよ! 出入りか!?
しかも『迎えを行かせる』って何様だ、おまえは・・・・・・っ!!
でもとりあえず着替える私がいて。
諦めが早くなったなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・。
Tシャツに厚めのジャンバー。色あせたジーパンにスニーカー。財布はウォレットチェーンで後ろのポケットに。
というかママ上? このラメ入りで光ってるジャンバーは一体何さ?
白袖に赤い背中、しかもその背中には金と銀で龍とか刺繍されてるんですけど。
私はどこぞのヤンキーか!? しかも「セットだからv」ってつけられた指輪もゴツいんだけど!!
この指輪・・・・・・。ケンカ用じゃないのか? 亜久津、答えてくれ・・・・・・。
髪も好き勝手にいじくられたからいつもとはちょっと違う。ディップとか塗りまくられたし。しかも眼鏡もかけさせられたし。
何というか、一言で言うなら『チームで参謀とか張っているケンカの強いインテリ男』みたいな感じ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
嬉しくねぇっ!!
「あのー」
嘆くのはもう疲れるし無意味だから、隣を歩く『お迎え』の人に声をかけたみた。
それにしても身長が高い。190センチあるかな。うん、たぶんある。
「知ってるかもだけど、です。お名前、教えてもらえます?」
「・・・・・・・・・樺地崇弘です」
「お年は?」
「・・・・・・・・・中二です」
「―――――タメじゃん」
わお! まさかこんなに体格のいい人がタメだなんて! いや人のことは言えないけどさ!
「じゃあタメ語でいいっスか?」
「ウス」
「かばっちって呼んでもいい?」
「ウス」
おおおおおおおお!! ちょっとした冗談で言ったのにオッケーもらっちゃったよ!
かばっちは心の優しい人なんだな・・・。だから跡部に使われても大人しく従ってあげてるんだろうな。
この鬼跡部め!! おまえがすべての元凶じゃねーか!! ちくしょうっ!
連れてこられた場所はなんというか、なんというか予想通り『氷帝学園』だった。
かばっちが部活っぽいジャージを着てるし、なんとなくそうなんじゃないかと思ってたんだけど・・・。
こんなお坊ちゃん&お嬢さん私立に私を呼び寄せて何するつもりだ、あの男は。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだよ、金持ち私立じゃんか、氷帝は。
だからこんなにも視線が痛いのか!! このヤンキーチックな服装をしている私が目立つから! 明らかに違う人種だから!!
制服で来るのとどっちがマシだったかなぁ・・・・・・・・・。
とりあえず目が合った女の子には微笑んでおいた。うん。ヤンキーかもしれないけど。
でも女の子は頬を紅く染めたのでまぁ大丈夫な気がする。というか大丈夫であってくれ。
「・・・・・・・・・ここです」
かばっちの声に本来の目的を思い出して視線を戻す。つーか忘れていたかったけどな!
予想通り、テニスコート。青学よりも数のあるテニスコート。
ある情報によると200人も部員がいるらしいけど、マジで多すぎる。
うちの管弦楽部は少なすぎるけどさ。ここよりはマシかも。ちゃんと練習できるし。
だけどさぁ・・・・・・。
「やっと来たな、」
フェンスで鈴なりになってる女の子たちをどうにかしろよ、跡部・・・・・・・・・・・・。
視線が痛い。というかテニス部員約200名とフェンス越しの女の子たちの視線が痛い。
どっちかがなくなれば楽になるんだけど。・・・・・・・・・背に腹は変えられない。うん。
というわけで女の子たちに向かって緩やかに微笑んでみた。それはもう、ヤンキーチックな外見に似合わず優しそうに。
―――――――――――ハッ! 失敗した!!
黄色い声とともにさっきよりも視線が痛くなったし! ぎゃうっ!選択ミス!!
「何してんだ、テメェ」
「・・・何でもない・・・・・・。さっさと話を進めてくれ」
頼むから早く帰らせてくれ、跡部。氷帝はいろんな意味で痛い・・・・・・っ!
なのになんで! 何でおまえはそんなことを言うんだよっ!?
「部活が終わるまでここにいろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何でやねん」
「樺地。忍足を呼んで来い」
「ウス」
無視かよ! とか思ってる間にも話は進んで、かばっちがテクテクと歩いていってしまった。
そうと思ったら練習していた部員たちの中の一人に話しかけて、今度は二人してこっちに向かってきて。
こ、断るタイミングを逃した・・・・・・・・・っ!!(今更だけどな!)
跡部が顎で目の前に来た部員を示す。
「。コイツが忍足だ」
「コイツって何やねん。自分が呼び出したんやから、もうちょい親切な対応してほしいわ」
おぉ! 関西弁だ! さっき私が言ったのとは違う本物の関西弁! 初めて聞いたよっ!
というか見た目が美形だから何か変な感じがする・・・・・・。
「どーも、っス」
「お、何や自分が跡部の新しいナンパ仲間か。話には聞いとるで」
「聞いてなくていいっス」
条件反射的に答えたら忍足さんとやらは目を丸くして、そして大口開けて笑い出した。
美青年なくせに大味な人なのか・・・・・・・・・?
「自分おもろいなぁ! 跡部の前でそうハッキリ言うた奴は初めてやで!」
喜んでいいのか、それは。どうなのか微妙な・・・・・・。
跡部はいつもどおりの顔でラケットを肩に置きながら命令してくるし。
「忍足。コイツの相手をしてやれ」
「えぇよ。何や楽しそうな奴やしな」
「行くぞ、樺地」
「ウス」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ほな話でもしよか?」
目の前でニッコリ笑う忍足さん。
―――――――またしても逃げるタイミングを失ったよ!!
「ほな毎週日曜は跡部と千石に呼び出されとるんか。災難やなぁ」
「まぁ一ヶ月に一回くらいは休みがもらえるんスけどね・・・・・・」
「あぁあぁ泣くなや。せっかくの男前が台無しやで」
「嬉しくないっス・・・・・・」
愚痴にも似た会話を交わしている私と忍足さん。
場所は氷帝テニス部のコート脇、ギャラリー席。しかも手には缶ジュースとポッキー。
これが跡部の差し入れだなんて・・・・・・っ! あいつ、一体何を考えていやがる!? 心底怖いんだよっ!
うんでもまぁ忍足さんは良い人だ。跡部の知り合いっていうのが考えられないくらい普通の人だ。
・・・・・・・・・今のところ。
「つーか忍足さん、練習しなくてもいいんスか?」
目の前で部員たちは必死になって練習しているというのに。こんなに堂々とサボっていてよいものなのか?
「あぁまだえぇねん。岳人が英語の補習で引っかかっとるしな。ダブルスの練習は一人じゃ出来へんし」
「そうなんスか」
なるほどなぁ。たしかにダブルスは二人で組んでやるもんだから相方がいないと成り立たないし。
ダブルス。
ダブルス?
ダブルス!
そう、ダブルスだよ!!
何で今まで気づかなかったんだ!
「あぁ? 忍足、おまえ何やってんだ?こんなとこで」
「跡部のご指名でお客様の相手や。おまえらこそどこ行っとったん?」
「室内トレーニング場ですよ、忍足先輩」
!!!!!!
人生が終わった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
さよなら裕太。さよなら桃。さよなら越前。さよなら数多くの皆様。
はただいまから旅立ちます。今までありがとうございました。
「客? 誰だよ」
「跡部の新しいナンパ仲間や。話には聞いてたやろ」
「あぁ、あの」
ツッコミを入れる気力さえありゃしねぇ。
「。こいつらも正レギュラーや」
クルリと身体ごと回されて。目が合って。
――――――――――目が合って。
「宍戸と鳳や。仲良うしたってな」
だからツッコミも入れられないんだってば。
蛇に睨まれた、蛙状態。
やっと判ったよ・・・・・・。
『気づかなかった』んじゃなくて『気づこうとしていなかった』んだ。
だって、こうなることが判ってたし。
「―――――――――――久しぶりだね」
その沈黙は何なんだ。
目の前で笑顔を浮かべるちょたにツッコミを入れずにはいられなかった・・・・・・・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ちくしょうっ!!