25:「覚悟はいいか?」





・・・・・・変な夢を見た。



カーテンを開けたままの窓から、朝の白い光が差し込む。
ベッドで目を覚ましたエドワードは、まず自分の手をノロノロと持ち上げた。
そのまま横を向けば床に散らばった紙が見える。どれも拙い錬成陣が描いてあるそれ。
積み重ねられて、倒れて広がった本。ペンとインク、失敗して丸めた紙。
その向こう、自分とは反対の壁側では、こんもりと布団を被った何かが丸くなっている。
エドワードは起き上がって床へと足を下ろした。
ひんやりとした、冷たい感触。
転がっている紙や本を踏みつけて一歩踏み出す。
小さく丸まっている身体。それを覆っている毛布。
枕。布団。シーツ。ベッド。
・・・・・・足が冷たい。
小さく上下している塊の傍まで来て腕を伸ばしたとき、エドワードは自分が震えていることに気づいた。
理由が判らない。だけど微かに手が揺れている。
気を振り絞ってその手を毛布へと押し当てた。
「アル」
最初は弱く。
「アルっ」
だんだんと強く揺すって。
「―――アル!」
お願いだから、目を覚まして。



夢なのだとどうか教えて。
まさかアレがおまえだなんて。
信じたくない。あるわけが無い。
証明して。証明して。証明して。
いつも通り、どうか笑って。



おまえは鎧なんかじゃなくて、人間だろう?
・・・・・・なぁ・・・?



「・・・・・・ん? 兄さん・・・?」
ようやく塊が身じろぎして、毛布の中から金色の髪が見えた。
自分よりも幾分か色素の薄いそれに、エドワードはホッと肩を撫で下ろす。
「・・・・・・おはよ、アル」
まだ寝ぼけている弟に、冷や汗をかいた手を悟られないように笑って。
そしてそのまま明るく告げる。

「今日は母さんに帰ってきてもらうんだからさ、頑張ろうぜ!」

今までの悲しみと努力が報われる日。
アルフォンスもそれを思い出して、寝ぼけ眼を輝かせた。
二人して喜びと楽しみで溢れた笑顔を浮かべる。
高い位置に昇っていく太陽が、子供たちの門出を祝福するかのように輝いている。
愛しい家族に向けて、エドワードは笑った。

『覚悟はいいか?』

夢の中で聞いた誰かの声に、固く固く耳を閉ざして。





2004年1月9日