084:なかったことにして
あれからこっち、屋上や裏庭、至る所でジローとを見る機会が増えた。
おそらく故意に増やされたのだろう。当の、ジローによって。
彼女であるが跡部を好きだったことから、今は自分の彼女だということを主張しておきたいのだろう。
・・・・・・・・・その気持ちは判らなくもないが。
のけぞるような形で、跡部はため息をつく。
「ここまであからさまにしないでもいいだろうが・・・・・・」
目の前でイチャつかれて、辟易気味なのは否定できなかった。
「ごめんなさい、跡部君」
そう、は言った。
班割りのため、本当に偶然に掃除場所が一緒になったときのこと。
と跡部は中庭で、ジローはたしか教室で。
偶然二人きりになったとき、は跡部に向かって言った。
「・・・・・・・・・何がだよ」
「私が跡部君を好きだったことを芥川君がいまだに気にしていて、そのことで迷惑をかけていることに対してです」
いとも簡潔に、なんのてらいもなく言ったに思わず目を丸くする。
こういう奴だったのか、と思った。
「おまえのジローへの態度に問題あるんじゃねぇの?」
「確かにそれもあると思います。でも私、今はちゃんと芥川君のことが好きですから」
ジローがこの場にいれば泣いて喜びそうな台詞である。
竹箒を片手にはそう言って、そしてまた落ち葉掃きを再開する。
跡部はそれを何とはなしに眺めていた。
箒が音を立てて枯れ葉を集め、一つの山を形成していく。
あとは塵取りで取って捨てるだけ。
それはまるで──────────。
「、おまえ俺のこと好きになれよ」
一山に集められては焼却され、塵と化す葉。
人の気持ちも、同じなのだろうか。
ヒラヒラと舞い続ける落ち葉の中で、跡部はそう思った。
2003年7月20日