080:夏の海
「景吾、行くわよ!」
「どこに」
「男は黙ってついて来い!」
妙にハイテンションで気合バッチリ入ってやがるに引きずられて、俺はクーラーの入った自室から出ることを余儀なくされた。
・・・・・・・・・・ゲームのセーブくらいさせやがれってんだよ!!
「ねぇねぇどれがいいと思うー?ワンピース?それともやっぱビキニ?」
「ビキニ」
「それは景吾の意見?それとも一般的な男性側としての意見?」
「りょーほー。つーか見せられるときに見せとけよ。ババァになったときに後悔すんのはオマエだからな」
「だねー。今なら若さということでちょっとくらいは多めに見てもらえるだろうし?型はどうしよー。モンロータイプか、トライアングルタイプか、あとはキャミソールタイプか」
「キャミソールは却下だな。つーかそんなの着て隠すくらいなら水着なんか着んな」
「うっわ厳しいご意見!でも乙女としてはどんなに痩せていても自信を持ってスタイルを晒せる子は少ないのだよ」
「でも隠されるほうがムカつく」
「それはあくまで景吾の意見」
そう言いながら手当たり次第に見ては戻しを繰り返していく。
会話内容から判るとおり、俺たちは今現在、夏の特設会場・水着売り場にいた。
カラフルな色の洪水。それと同じくらいうるさい女たちの楽しそうな声。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何で俺はこんなところにいるんだ。
野郎なんかカップルで来てる奴ら以外一人もいねぇじゃねーかよ!(まぁ男が一人で女物の水着売り場にいたらかなり怖いが)
―――――――――――――まて。
俺はふとした事実に気づいて水着を品定めしているに目をやった。
もしかして、もしかして。
俺はコイツと恋人同士とかに見えてるんじゃないだろうな!?
そんな地球が半分に割れてもありえないだろうことを今この俺の周囲にいる人間たちは想像しているのか!?
なんて愚かな!
つーか、あ・り・え・ね・え!!!
「ねぇ景吾。こっちとこっち、どっちがいい?」
が振り返って両手をちょっと掲げた。
右手には白のモンロータイプ。刺繍が施してある。
左手には黄色のトライアングルタイプ。細かい幾何学模様。
「つーかオマエにはこっちの方が似合うだろ」
俺が手に取って示したのはワイヤーブラタイプのダークブルーに赤いリボンの水着。
模様はパッチワーク柄でリボンがいい感じにアクセントになっている。
これならカジュアルだし、そうは見えねぇが一応まだ中三のにはピッタリだろう。
「えーでも来年になったら着られなくない?」
「どうせ来年はまた新しいのを買うだろ」
そしてまた俺が引きずり出されるんだ。
この俺様を荷物もち代わりに使う女なんざオマエとババァくらいだぞ。
「あとはこっちだな」
黒に小さなドットが散らされているモンロータイプ。
胸の内側にはフリル、パンツには紐飾りがついている。
コレは可愛い。文句なく可愛い。というかこういう俺好みの水着を着ている女には問答無用で目をやってしまう。
「あ、それ可愛い」
俺と趣味が近いはアッサリと同調して、自分が持っていた水着を元の棚に戻して。
「じゃあ試着してくるねー」
そしてさっさと店員の方へ消えていった。
数分後。
「ねー景吾、どう!?」
シャッとカーテンを開けてが現れる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「今年の夏、一緒に海行こうぜ」
「日吉若の次にねー」
夏の予定は決まった。
2003年7月24日