079:たとえばこんな愛し方
スリザリンは怖い。
だから極力近寄らないことにしていたのに。
スリザリン出身の先生にも、生徒にも、近寄らないようにしてたのに。
すべては徒労に終わってしまった。
囚われてしまった。
一番、関わりたくなかった奴に。
黒い髪が視界で揺れる。
紅い瞳がこちらを見てる。
怖い。
恐い。
・・・・・・・・・こわい。
「の髪は僕よりも黒いんだね。これがアジア出身の色なのか」
何も言ってはいけない。
余計なことを話せば彼は自分を気に入るだろうから。
「瞳も綺麗な黒だしね。まるで吸い込まれてしまいそうなくらい」
瞳を合わせてはいけない。
その目を見れば彼は自分を気に入るだろうから。
「ねぇ、何か話してくれない?の声が聞きたいんだけど」
言葉を発してはいけない。
この声を聞かせれば彼は自分を気に入るだろうから。
「」
俺の名を呼ぶな。
「・」
アイツと同じ響きを持って。
・・・・・・・・・俺の名前を、呼ぶな。
アイツと同じ響きを持って、「愛してる」なんて絶対に言わないでくれ。
「・・・・・・・・・トム・マルヴォーロ・リドル」
その中に流れている血は紛れもなくアイツと同じ。
好きだったよ。たしかにアイツのことは好きだった。
侵食されていくアイツを止められなかったこと、今でも胸が軋むくらい悔やんでいる。
俺たちから離れていくアイツを留められなかったこと、今でも胸が締め付けられるくらい悔やんでいる。
アイツを。
アイツの想いを受け止められなかったことは、それだけは、悔やんではいないけれど。
俺には愛している奴がいるから。
アイツではなく愛している奴がいるから。
だから、ゴメン。
ゴメンな、サラザール。
「スリザリンの主席の君がどうしてハッフルパフの俺に近づくのか知らないけれど、もう二度と話しかけないで欲しい」
でなければ俺が壊れてしまうから。
「悪いけど、スリザリンとは関わりを持ちたくないから」
アイツと繋がりのあるすべてのものとは、関わらずにいたいから。
「ゴメン」
そのときの俺はまだ気づいていなかった。
彼が、アイツと同じ道を歩もうとしていることに。
止められないで泣く自分に、気づいてはいなかったんだ。
2003年9月28日