069:サンドイッチ
「53点。ギリギリで半分超えたってとこだな」
猿野天国の容赦のない判定に清熊もみじはガックリと肩を落とした。
膝の上にはシンプルなお弁当箱。
手の中にはサンドイッチ。
ちなみに具は定番の一つ、タマゴ。
それを黙々と咀嚼しながら天国は呟く。
「タマゴサンドの場合はゆで卵を潰すよりもスクランブルエッグを挟んだ方が滑らかになるぜ。まぁ人の好み次第だけど」
「・・・・・・・・・・おまえはどっちが好きなんだよ」
「スクランブルエッグ」
天国はそう言ってゆで卵のタマゴサンドを飲み込んだ。
「パセリやバジル、あとはたらこを混ぜたのとかもイケるな」
寄せられるコメントをもみじは慌ててルーズリーフに書き留めて。
次に天国が手に取ったのはハムレタスサンド。
「これ、マーガリンにマスタード入れたのか?」
「あ、あぁ。だってこの前オマエ、マーガリンだけじゃダメだって言っただろ?」
ビクッと反応したもみじに天国は笑って。
「ちょっとは学習してんな。ハムレタスサンドは合格」
パァッと笑顔を浮かべる様子に微笑して、そしてまた弁当箱へと手を伸ばす。
そしておや、と目を瞬いた。
手に取ったサンドイッチに挟まれていた具は。
「チャイニーズサンドイッチ?」
へぇ、と呟きながら物珍しそうにそれを口に入れる。
もみじは慌てて口を開いた。
「あ、そ、それは焼き豚とネギを挟んでて」
「ソースはテンメンジャンとバター?」
「あぁ。あと溶き辛子」
モグモグと食べる天国の様子をジーッと見つめて・・・むしろ睨んで。
ゴクンと飲み込んで天国はニヤリと笑う。
「これ、オマエが考えたんじゃないだろ」
「・・・・・・・・・・・何でだよ」
「辛子とバターはともかく、テンメンジャンを入れるっていう発想は料理初心者には浮かばないからな」
名前を知ってるだけでも意外だし、と続けて言うと、もみじはグッと言葉に詰まって。
そして悔しそうにうつむいた。
「・・・・・・・・・母さんに教えてもらった」
「素直で宜しい」
ポンポンと頭を撫でれば、それをベシッと叩き落とされて。
気の強さに天国は楽しそうに笑う。
「まぁせいぜいお袋さんの腕前を盗んどけよ」
もう一度、今度はその髪を優しくかき混ぜて。
「俺の奥さんは家庭料理が得意じゃないとなれないからな」
天国はニヤリと笑って次のサンドイッチに手を伸ばす。
その向かいでは意味を図りかねているのか眉間にシワを寄せたもみじがいて。
ポテトサラダの味付けに首を捻って、天国は言う。
「ポテトサラダはもうちょっと勉強しとけよ?」
そこまで言われたようやく意味の判ったもみじは顔を真っ赤にし。
天国はそんな将来の奥さん候補に笑みを漏らすのだった。
2003年7月21日