068:じゃんけん
「「さいしょはグッ!じゃんけんぽんっ!!」」
切原赤也とがじゃんけんをしたとき、その勝敗は目に見えている。
ふてくされた様子でネットを張っているに真田弦一郎は内心で溜息をついた。
「・・・・・・・・・いい加減にじゃんけんは止めてやれ。が勝てないのは判っているだろう」
「判ってるからやるんじゃないスかー」
カラリと笑う赤也に真田は今度はあからさまに溜息をついた。
「親友じゃないのか・・・・・・?」
「親友だからこそっスよ」
利用できるものは利用しないと、と力いっぱい宣言する赤也にさらに額を押さえてしまって。
テキパキと部活の支度を整えているの横顔はいまだ不機嫌な様子を湛えている。
このご機嫌ナナメを回復するのはかなり厄介。
と赤也は気分屋な分、他に興味が移ればすぐに元通りになるのだが・・・・・・。
楽しそうにの様子を眺めている赤也の隣で、どうしようかと真田が眉間に皺を寄せていると、一人の人物がへと近づいていくのが見える。
あの身長と雰囲気からいって・・・・・・。
「蓮二?」
二人はそろって首をかしげた。
真田と共に立海大付属中の二翼を担う柳蓮二。彼はスタスタとボール籠を並べているへと歩み寄って。
そして。
毛玉を追い掛け回す子猫のようにじゃれあっている赤也とを視界の端に収めつつ、真田は柳へと近づいた。
当の柳はストップウォッチやらコーンやらを何故か楽しげに並べている。
「・・・・・・どういう気まぐれだ?」
支度する人物が柳に代わったことで、お役ゴメンと干されていた一年生や二年生が慌てながらも準備を手伝いだして。
がしているときには楽しそうに眺めていた三年生はいまや腹を抱えて笑い出している。
そんな中でも猫二匹はあっちへ行ったりこっちへ来たり。
真田は親友の考えがときに読めなくなることを思い出しながら溜息をついた。
「にじゃんけんで勝つことぐらい簡単だろう。何故わざと負けた?」
がじゃんけんに弱いことは立海大付属中テニス部における公然のルールで、彼に勝つ方法は暗黙のルールで。
それをこの柳蓮二が知らないはずはない。
真田の問いかけに柳はさも当然のように笑って言った。
コートでは、いまだ赤也とが走り回っている。
「だって、笑っている方が可愛いだろう?」
2003年9月6日