065:回復する傷
朝はどうしても苦手
「おらおらガキども!さっさと行かねぇと遅刻だぞ〜?」
「―――――こっんのクソ親父!もっと早く起こせ!」
「いつまでも寝てるおまえらが悪いんだろ?お父様に八つ当たりすんな」
「リョーマっ早く!」
「気をつけていけよー」
「「いってきますっ!」」
揃いの声をあげて家を出る
筆箱とノート二冊くらいしか入ってない鞄を投げ渡して
リョーマがサドルに
が後ろに
勢いよく自転車を駆け出した
藍色のブレザー
ネクタイはあってないようなもの
公立高校だから規則は割合と自由
リョーマはFILAのスニーカー
はNIKEのスニーカー
鞄は指定じゃないから適当にノートと弁当箱が入るサイズのものを
自転車はめんどうだから一台で
学校まで最短記録は8分
ちなみに距離は3キロ弱
これを超えるのが今日の目標
「リョーマ、これじゃ遅刻っ」
「うるさい!黙ってて!」
真剣にペダルを踏んで
走る
テニスを辞めた
二人、一緒に
――――――――――いや、違う
テニスを始めた
二人、一緒に
どこにも属さず
互いに、独りで
世界を舞台に
敵となることを、決めた
一体何が悪かったのかなんて判らなくて
自分では判っていることも相手には判ってもらえなくて
悲しくて苦しくて
何度も泣いた
何度も喚いた
周りの人に散々迷惑をかけて
それでも散々愛してもらって
向き合わなくちゃ駄目だと思った
これが、最後のチャンス
胸を張って生きるために、ぶつからなくちゃいけなかった
庇護されていた殻を破って
愛してくれる人に恥じないでいられるように
そのために舞台へ並び立つと決めた
たとえ何度勝とうと負けようとも
コートに根を下ろし一人で立つことを決めた
独りじゃないと、判ったから
今まで本当の意味で判れなくてごめんなさい
そう言ったら抱きしめられた
優しくて力強くて心も身体も満たされて
背中を押されて、走り出した
ブーイングさえも称賛に変わるプロの世界へと
まだランキングでは下の下で
それでも確実に勝利は重ねていて
世界を揺るがすのも時間の問題
二人で言って笑いあう
親の七光りも喜んで
実力は折り紙つき
フォローなしなのも折り紙つきだけど?
それでも、ギャラリーを沸かせるだけの魅力はあるから
立ち上がろう、二人で
ネットを挟んで敵として
それでも独りじゃないと判ったから
立ち上がろう、一人で
世界にいるのは自分たちだけじゃないと知った
それがすべての始まりだった
割れた風船のように溢れ出る想い
すべてが輝く瞬間を見た
「ねぇ、」
帰り道はのんびりと
行きとは逆でがサドルに
リョーマは鞄二つ持って後ろに立って
「来週のゲーム、負けないから」
強気な宣言に二人で笑った
「俺だって負ける気はないよ。それに跡部さんたちも観に来てくれるって言ってたしね」
「俺のとこも手塚部長とか菊丸先輩が来るって言ってた」
「じゃあなおさら負けない」
「俺だって」
笑い合えるようになった
こんな日、来るとは思ってなかった
・・・・・・・・・今なら、言わなくても判る?
I love you, my butty.(愛してるよ、兄弟)
一緒に生まれることが出来て本当に良かった
2003年8月28日