063:新しい世界





保健室に何故かあったスプーンで目玉を刳り貫いて思った。
あぁ、意外と人間は粗雑に出来ているんだ。
だってホラ、こんなに。
こんなに簡単にバラけてしまえる。
笠井竹巳はうっとおしく糸を引き続けている神経をハサミで切った。
正面では一生懸命に内臓を掘り出している少女がいる。



あぁ、何て素晴らしい。



撒き散らされてスカートを染める赤い血。
肉を引き千切り削って抜き出した白い骨。
黒とも紫ともピンクとも似つかない内臓。
あぁ、なんて綺麗なコントラスト。



そしてその中央にいる愛しい愛しい想い人。



あまりにも絵になる光景に見惚れながら、笠井は大きく恍惚の溜息をついた。



「ねぇ、さん。俺はこれが終わったら誠二と合流するよ。どこにいそうかも検討がついてるし」
「そうなの?スゴイねぇ、笠井君」
さんは一緒に行かないよね?」
「うん、行かない。このまま一人でいるよ。だってそのほうが動きやすいもの」
「俺もそう思うよ」
「ならどうして藤代君のところに行くの?」
「さぁ、どうしてだろうね」



パズルのように床に部品を並べている少女に右の二の腕を差し出した。
人の体から切り離されたそれは意外と重い。
人間は結構多くのパーツから出来てるんだな、と笠井は思った。
その間にも死者のプラモデルは完成していく。
もちろん接着剤なんてものはないけれど。



「まだ10人以上は残ってるね」
「うん、そうだね。まだまだ残ってるね」
さんはこれからも殺し続けるの?」
「ううん、わかんない。殺すかもしれないし、殺さないかもしれない」
「そっか。俺は出来る限り多くの人と合流してみるよ」
「うん」
さん以外の人と全員合流できたら、連絡するね」
「どうやって?」
「まだ考えてないけれど、でも必ず分かるように合図するよ」
「うん」
「そうしたら、俺のところに来て」
「うん?」
「みんな殺しちゃおう?」
「うーん」
「殺したくない?」
「わかんない。でも」



大きすぎるマシンガンと長すぎる日本刀を持って。
立ち上がったスカートから真っ赤な液体が雫になって落ちた。
浮かぶのは、可愛らしい笑顔。



笠井と藤代が愛しくてたまらない笑顔で。



「私が殺したいと思ったら、殺すよ」



しごく当然のようにそう言った少女に笠井は笑った。
なんて愛しい人。
こんなにも紅が似合うだなんて知らなかった。



捧げるなら、紅。



「じゃあ、またね」
笠井はそう言って保健室を出た。
向かうは親友と思っている藤代の元。
自分と同じように少女を慕っている、親友の元。



きっと、誠二の血を浴びればさんはさらに輝く。



慎重に扉に手をかけて、大きく息を吐いて、そろりそろりと音を立てないように開く。
中で誰かが動いた気配に目を丸くして。
「・・・・・・・・・誠二・・・・・・・・・?」
信じられないように声まで震わせて。
自分を見とめて安心したように笑う親友を前に笠井も笑った。



捧げるなら、紅。





2003年7月26日