057:裸婦の肖像





テニス部の練習が終わる頃になると、コートの近くに現れる影。
それはいつのまにかお馴染の光景となっていた。
先輩、ちょっと待ってて」
そう言って部室へと着替えに行く後輩を笑顔で見送る女生徒。
彼女の名は
電光石火の攻撃の末に、越前リョーマの恋人となってしまった少女である。



「オーチビ!今日もちゃんと帰んの?すっごいラブラブじゃん」
退屈を持て余していたのか、制服に着替え終わった菊丸が話しかけてくる。
「そうですよ、羨ましいでしょう?菊丸先輩」
「うにゃ!後輩のくせにナマイキー!」
「何とでも」
ニヤリと口元を歪めてリョーマが笑うと、菊丸はムッと頬を膨らませる。
けれどストレートに文句を言っても効果がないと判断したのか、彼にしては珍しくカーブを放つことにしたらしい。
先ほどのリョーマのようにニヤッと笑みを浮かべて。
ちゃんさぁ、今三年の間で人気あんだよなぁ。結構可愛いし、控え目な性格もポイント高いし、色白だし、スタイルいいし」
「・・・・・・・・・」
「この前も八組の奴が告白したらしいけど、おチビ知ってる?」
珍しい。彼にしては珍しいくらいのカーブである。
菊丸にこんな芸当が出来たのかと思いながら乾はノートを開いて書き込み始め、大石や河村はオロオロと二人を見比べて。
不二はニッコリと常と変わらず微笑んだ。
リョーマは呆れたように肩を落としてワイシャツのボタンを留め始める。
「知らないっスよ、そんなの」
「あっれ、知らにゃいの?へー。ふーん。そー」
わざとらしい相槌に知らずため息をついて、リョーマは学ランを羽織った。
楽しそうな表情を浮かべている菊丸と不二。
そして今だノートへと書き込みを続けている乾と、心配そうな大石と河村を見遣って。
王子様の専売特許、不敵な笑みをゆっくりと浮かべる。
そして言った。



「誰がを魅力的にしたか、先輩、判ってないんスね」



それはもう艶やかに、男としての色香さえも漂わせて。
固まってしまった先輩方に微笑を一つ。
「それじゃ、お先っス」
おざなりの挨拶をして部室を後にした。



越前リョーマの完全勝利である。



「・・・・・・・・・・・・・・え?え?え?え?え・・・・・ってやっぱり今のって!今のってさぁ!?」
「ふふ。さすが越前。手が早いのは帰国子女だからなのかな」
「いや、データから見ると帰国子女だからというよりかは越前の性格だろう」
「・・・・・・ま、まだ中学一年生なのに・・・・・・・・・」
「え、越前・・・・・・・・・」



動揺に顔を真っ赤に染めている先輩方も捨て置いて、リョーマは愛しい恋人の手をしっかりと握る。
「ねぇ。明後日、おばさんたち旅行なんでしょ?泊り行ってもいい?」
「─────────だっだだだだだだだだだだだめっ!!!!!」
「何で。行ってもいいよね?だって俺、ここしばらくに触れてなくてそろそろ限界だし」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜だからっ!その手の発言はしないでってば!!」
「ねぇ、行ってもいいでしょ?」
「ダメ!」
「ねぇってば」
「だからダメだってば!」
痴話喧嘩としか聞こえない会話をしながら歩く二人。



何だかんだ言いつつも、どこからどうみても恋人同士にしか見えない二人なのであった。





2003年7月16日