053:残酷な夢
小走りの足音とローブの衣擦れ、そして猫の鳴き声が遠ざかって消えていく。
ブロンズの銅像に隠れて、二人初めてキスをした。
くしゃくしゃとサラサラの黒髪が混ざる。
コツンと額を合わせて、伝わる温かさに二人して笑った。
唇や頬、鼻にかかる吐息がくすぐったい。
薄暗い廊下、紅と碧の紋章が互いのローブに押し付けられて。
常より速い心音を、伝える。
「・・・・・・・・・ドキドキする」
囁く度に触れてくる唇に、は小さく笑う。
「・・・・・・・・・俺も、ドキドキしてる・・・」
「・・・本当?」
「・・・・・・本当」
微かに触れ続ける互いの唇に、ジェームズはゆるりと口元を緩めて笑った。
それはあたかも、至上の幸福を甘受しているように。
触れて、離れて、そしてまた触れて。
熱が伝わって、溶ける。
柔らかな想いが唇を介して、心に届く。
愛しくて、愛しくて、愛しくて。
涙が出そうになる。
触れてくる手が、優しすぎて。
――――――――――思い出してしまう。
触れる、手。
柔らかな、熱。
告げられる、言。
真直ぐな、瞳。
優しい、愛。
すべてが似通っていて。
泣きたく、なる・・・・・・・・・。
涙を拭う唇。
その優しさがさらにを苦しめる。
ジェームズの温かさがさらにを涙させる。
何もかもがすべてに悲しみを思い出させて。
そしてまた、幸せにさせる。
「・・・・・・・・・大丈夫、僕は、ここに、いるから」
すべてを判っていてそう言ってくれるジェームズに、は顔を歪めて笑った。
どうかいつまでも、このままで。
2003年7月25日