048:僕はこの目で嘘をつく
顎にかけられた指にしたがって上を向いて。
近づけられる顔にゆっくりと目を閉じて。
重なった唇に内心で笑った。
「・・・・・・」
口づけの間に漏れる声。
それが擦れていて、熱を持っていて、はやはり内心で苦笑する。
もちろんその可愛らしい顔にはおくびも出さなかったけれども。
むしろ頬は薄い紅色に染めて。
大きくて長い睫の瞳にはうっすらと涙さえ潤ませて。
「・・・・・・・・・ぁとべ、さん・・・・・・・」
もう一度唇を塞がれる。
テクニックはまぁまぁだな、なんては思って。
歯列をなぞる舌に肩を震わせた。
キスは、合格点。
唇から顎、そして首筋へと降ろされていく。
湿る感触と甘噛みされるくすぐったさ。
弱弱しく肩を押し返して。
顔を上げた相手に困ったように首を振って。
「・・・・・・・・・だめ・・・」
瞬間、切なげに顰められる眉。
整った顔立ちにそれは良く似合って、は薄く微笑む。
跡部にとってそれは、儚い笑みにしか映らなかったけれど。
名残惜しそうに首筋の紅い痕を見やって、それでもは首を振り続けるから。
跡部はもう一度、その唇を塞いだ。
甘くて優しい
・・・・・・・・・切ない、キス。
与えられる口づけに、今はただ酔って。
横に眠る跡部の髪を梳いて、は腰を上げた。
もちろん服は着たまま。何もなかった、一夜。
思わず笑ってしまって、そんな跡部も好ましいと思って。
乱れてしまったルージュを塗り直す。
「さて、と。裕太が心配してるだろーから早く帰ろっと」
立ち上がって鞄を手に取った。
そしてもう一度ベッドでいまだ寝ている相手を見下ろして。
微笑んで、その頬にキス。
「ごめんね、跡部さん」
彼はそう言い残して扉へと向かう。
フレアーのスカートが風を受けてふんわりと広がった。
2003年7月25日