044:シンデレラの靴
「好きだ」と少年が告げたときの少女の反応はとても微妙なものだった。
目を大きく見開いて、口をOの形に開いたまま停止して、しばらく経った後で顔を真っ赤に染める。
パクパクと唇を上下させるけれど、言葉は出てこなくて。
そんなを見て柾輝は口元を緩めた。
その浅黒い肌を少しだけ染めて、とても満足そうに。
「で、返事は?」
「な、ななななななななななななななななななななんかの冗談?」
『―――で、あってほしい』と顔にデカデカと書いたを見て、柾輝はやはり楽しそうに笑う。
「俺が冗談でこんなこと言うと思うか?」
「・・・・・・・・・・・・いや、思わない・・・・・・・・・けど」
「なら本気なんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
言葉をなくして俯いてしまった少女。
赤く染まっている頬が可愛らしくて、知らず笑みが浮かぶ。
チラッとこちらを伺ってくるに重症だな、なんて思いながら。
「・・・・・・・・・でもほらさ、私、こんな外見だし」
「『こんな』って何だ?俺には綺麗な女にしか見えねぇけど」
「っ!・・・・・・・・・身長も柾輝より高いし」
「たかが3・4センチだろ。すぐに追い付くさ」
「・・・・・・・・・言葉遣い悪いし、性格も男に近いし、ケンカもするし」
「それを全部まとめて『』なんだろ?」
「・・・・・・・・・そりゃそうだけどさ・・・・・・」
戸惑うように眉を寄せて、腕を組んで考える様子を見守りながら柾輝は考える。
次に発されるだろう言葉は容易に想像がついた。
「あっ、それにちょたとか跡部とか杏ちゃんとか魔王とかいっぱいついてくるし───」
「」
柔らかく名を呼ぶことで止まらない思考回路を停止させて。
いつものシニカルな笑みで優しく見つめて。
「俺とつきあおうぜ。・・・・・・返事は頷くか、首を振るかでいいから」
再び真っ赤な顔になって俯く少女に少年は笑う。
勝ち目の無い勝負はしない主義なんだよな、なんて思いながら。
2003年7月16日