041:しせん
その眼に絡め捕られたら、完全降伏しかないと思う。
向日岳人とが付き合い始めて一ヶ月も経つ頃には、周囲もようやく諦めたのか、彼らが呼び出しを受けたりすることはなくなっていた。
顔に当たり前のようについていた痣や傷は姿を消して、その代わりにほんの僅かな笑顔が浮かぶことが多くなった。
向日岳人は、ハッとするほどの強さを秘めた眼を。
は、熱を持ってしまうほどの柔らかな眼を。
彼らは持つようになっていた。
お互いの、前でだけ。
端から見たら変な自負を向日岳人は持っていた。
彼は言うのだ。楽しそうに笑って。
「と付き合えるのは俺しかいねーよ」
不思議そうに首を傾げる友人に、笑って。
さも当然のように。
「だってが俺を選んだんだからさ」
強すぎる眼を見て、けれど笑えることが当たり前になった。
だってあの眼があってこその、だから。
あの眼に見つめられたら、その一瞬がきっと自分の瞬間になる。
共有できるのだ。
同じものを感じることが出来る。
愛しさと一緒に。
廊下で偶然会ったとき、たとえ間に人がいても自分を見つけてくれる眼が好きだ。
その眼が一瞬だけ綻んで口元が笑む瞬間も。
全部全部好き。
「」
呼び止めて、見上げて、見下ろして。
二人して同じように楽しそうに笑って。
唇を、重ねる。
大量の視線と叫び声を聞きながら、二人して笑う。
そしてもう一度、口づけを。
その眼に絡め捕られたら、完全降伏しかないのだから。
2003年7月20日