035:そぅっと覗いてみてごらん
私は、一つの秘密を知っています。
誰にも言ったことがありません。親友の圭ちゃんにも、部活で仲の良い凌君にも、お母さんやお姉ちゃんにも。
誰にも誰にも言ったことがありません。
これは私だけの秘密。
あのね、あのね。
私の右斜め前の席の小島有希さんは、窓側前から三番目の席の君のことが好きなのです。
小島さんはクラスでも・・・・・・というか、学年でも学校でもかなり有名な女の子。
容姿が可愛らしいのもあるんだろうけれど、女子サッカー部を作って活動してるってことでも有名みたいで。
でも逆に、そんな小島さんに見つめられている君は、あまり目立つこともない普通の男の子。
容姿は水野君みたいに特別カッコイイというわけでもないし、たしか勉強も運動も普通の成績だったと思う。(詳しくは知らないのだけれど)
そんな君を、小島さんはときどき・・・・・・・・・うん、ときどきものすごく綺麗な顔をして見つめてる。
優しくて、幸せそうで、でもその瞳は熱をもってるみたいに一生懸命で。
そんな小島さんの様子を授業中にたまたま見てしまった私はすぐに気がついた。
あぁ、小島さんは君のことが好きなんだって。
それからというもの。
知ってしまったからにはどうしても気になってしまって、私は授業中にちらちらっと小島さんを見るようになった。
斜め前の席だから、その可愛い横顔はすぐに見えたりもするんだけれど。
先生のお話の間に、ときどき小島さんは視線を動かす。
チラッとそれが窓際の方を向いて、そしてまた少しすると黒板の方へ戻る。
あ、今もそう。小島さんが慌てたように前を向いた。
・・・・・・こっそりと見てみると、君がこちらへと向いていて、でもって首を傾げてまた視線を黒板へと戻している。
もう大丈夫だよ、小島さん。
ホッとしたように肩を撫で下ろす後ろ姿を見て、少しだけ笑ってしまった。
小島さん、すごく可愛い。
どうか小島さんの恋が実りますように。
私には誰にも言ったことのない秘密があります。
そしてそれはまだまだ言う気がないのです。
少なくとも小島さんが君と両思いになるまでは絶対に言う気はないのです。
だからね、頑張って!
今日も私は斜め後ろの席から小島さんを応援しているのでした。
2003年7月24日