033:秘密基地
「俺がシングルス1」
「やだ。俺がシングルス1」
「アーン?何言ってやがんだ、リョーマ。この俺が大将で何が悪い」
「パフォーマンスが悪い。」
「・・・・・・おまえはシングルス2でいいだろ。その方が試合が回る確率も高い」
「それならシングルス3じゃないの」
「保険だ、保険」
先ほどから繰り返されている王様部長・跡部景吾と王子様ルーキー・越前リョーマのやりとり。
他の正レギュラーたちはそれを楽しそうに眺めている。
跡部の手の中には先日行われた部内トーナメント戦の結果があって。
王冠のイラストが描かれたトップには跡部の名が。
そして次点のシルバーメダルのイラストのところにはリョーマの名が書き込まれている。
つまりこれは氷帝男子テニス部の勝者番付。ようするに正レギュラー決定表。
上から順にシングルス1、シングルス2とつけていけばリョーマがシングルス1でないのは明確で。
けれど王子様なリョーマとしては納得がいかないのも事実なのである。
「ほなリョーマ、俺とダブルス組もか?そんなら試合もし放題やで」
忍足侑士の『試合し放題』という言葉にピクリと反応してリョーマが振り向く。
その向こうで跡部が不機嫌そうな顔になったが、忍足からしてみればそんなの知ったことではない。
むしろリョーマを独占するな、とばかりにニヤリと笑みを浮かべて見せて。
「えーじゃあ侑士じゃなくて俺と組もうぜ!一緒にムーンサルトしよう!」
侑士はムーンサルト出来ないし、と向日岳人が笑って言うと、鳳長太郎や宍戸亮まで誘いをかける。
「なら俺と組みましょう?リョーマ君と一緒にプレーできるなんて嬉しいな」
「コントロールのない長太郎よりかは俺の方がいいんじゃねーの?ライジングなら俺も使えるしな」
「酷いです、宍戸さん!」
「何だよ、本当のことだろ」
ぎゃあぎゃあと喚きながらもダブルスの権利を争いあって。
リョーマはそんなレギュラー陣を呆れながら見やって、喧騒の輪から外れて部室備えつけのベンチへと歩み寄る。
グゥグゥと眠り続ける芥川慈郎の手の中にある漫画を取り上げて、パラパラとページをめくって。
滝萩之介から差し出されたポッキーにパクついて、樺地崇弘から差し出されたジュースのプルタブに苦戦して。
見かねて手を出した日吉若から蓋の開けてもらったジュースを受け取って、リョーマはお礼とばかりにニコリと笑った。
そして爆弾発言を一つ。
「ダブルス組むなら、榊監督とがいい」
テニスは上手いし、フォローもバッチリできそうだし、言うことないかも。
リョーマはそう言ってパクパクとポッキーを食べ続ける。
一気に静まり返った部室内など気にも留めずに。
氷帝学園男子テニス部はルーキーを中心に回っているのであった。
2003年8月17日