031:あきらめましょう
「この手に、世界がつかめたらいいのに」
そう言った彼の気持ちが判らないでもなかったんだよ。
12歳のとき、自分が魔法使いだと知らされた。
中学校に上がる代わりにホグワーツへと入学した。
三年生のとき、イギリスにある本校へと留学した。
その後いろいろなことを経て成長した(つもり)。
18歳で、ホグワーツを卒業した。長い道のりだったなぁ。
「どこが?」
素で聞かないでよ、リドるんってば。
「僕と比べたらはまだまだまだまだまだまだまだまだ若いよ」
そりゃそうだろうね。もうすでに80歳を迎えるであろう君と比べたら私は若いだろうよ、まったく。
永遠の16歳め。私もこのまま時が止まったりしないかなぁ。
「僕ならをそのままで留めることが出来るけど?」
「サラザール・スリザリン系魔法はゴメンナサイ」
「手段を選ぶようじゃ美は保てないよ」
リドるん、アンタはどこの美容会社の回し者だ。
それとも深夜通販にハマってるのが悪いのかなぁ。あ、私じゃないからね。ハマってるのはリドるんだからそこのところお間違えなく。
ちなみに金はヤツの金庫から引かれてるはずだから。この前記帳しに行ったとき、私の金庫には変化がなかったし。
もうちょっと利息とか利子とかつけたりしてくれないのかしらねぇ。チッ!魔法界も不景気な!
「住宅ローン、どうしようか」
「この家、そういうの関係ないんじゃない?というか全部任せっきりだから判んないんだけど」
「まぁそうだね。屋敷しもべに任せておけば確かだろうし」
リドるんはそう結論付けて再びソファーに腰掛けて優雅に紅茶を飲みだした。あぁ、マジで絵になるよ。
出会った頃は思念体で実体なんかたまーにって感じだったのに、いつの間にやらこれが当然になってるし。
やっぱりヴォルデモートさんが亡くなったのが大きかったのかなぁ。その分を吸い取って実体化したとか?うわ、ありえる。
ありえすぎて笑えないしー・・・・・・・・・。
「それで、どう?ご注文の薬は出来た?」
「んーどうにかね。あぁでも面倒なものを注文してくれたよ、マルフォイ家の新当主は」
「惚れ薬、に使うんだろうね」
「そんなことしなくてもドラコならオッケーなんだけどなぁ」
金持ちだし優しいし性格もいいし?うん、オッケーオッケー。
「僕が邪魔するよ。をそう簡単には渡さない」
サラッと言ってのけたリドるんに思わず笑った。
でもさ、どのみち無理だと思うわけだよ。ドラコとの結婚も、リドるんとの結婚も。
だって、ねぇ?
「第二のヴォルデモートを作る気はないからさ」
私が子供を生んだら、それはまた才能に溢れた素晴らしい子供になると思うのだよ。
それはもうドラコやリドるんとの子供だったら尚更のこと。
で、スリザリン×スリザリン=スリザリン。というわけで生まれてくる子供の属性はスリザリンに決定。もう120%くらいの確率で。
才能の溢れすぎる子供はどこでどう間違えるか判らないからね。それは勘弁してよ。
「まぁその可能性は否定できないね」
ほら、ヴォルデモートさん本人(別個体)もこう仰ってることですし。
「でもそれでドラコ・マルフォイやハリー・ポッターはまだしも日本校の面々は納得しないんじゃない?はレイブンクローだったんだから」
「あー・・・・・・」
そういや、そうかも。ちょっとうっかりさっぱり忘れてたよ。
うん、でもさ、マジで子供を作る気はないんだよ。というか相手が生んでくれるって言われてもお断り。
この血は誰にも継がせずに、私の代で終わりにするつもりだし。
そんなことを考えながら完成したピンク色の惚れ薬をビンに詰めて。はい、オッケー。
これでお仕事も一つ終わり。次は西園寺先生に頼まれてる猫型ロボット薬を作らなくては・・・・・・。
アレ、特殊な薬草とか用いなきゃいけないから面倒なんだけど・・・・・・・・・まぁいいか、料金はその分割り増しで払ってくれるらしいし。
何より恩師である西園寺先生の依頼だからね。完璧にやらせていただきます。
さて、裏山にでも薬草を刈りに行くか。
「リドるん、暇なら手伝ってよ」
これで稼いだ金は君の生活費にも使ってるんだからね?いくら思念体になれて必要ないからって少しは働きなさい。
つーかただ食いは許さん。
「の薬作りは半ば趣味だと思ってたけど?」
「否定はしないけどさ」
「生きてる間に遺産とか全部使い切れないよ、このままだと」
「あー・・・・・・・・・それはもったいない」
やっぱ大物買いをするしかないか。大物って何だ・・・・・・?学校とかか?
あはははは!私が学校作るの!?ホグワーツみたいな!?うっわ、それも楽しそう!
つーかそれこそヴォルデモート二世養成機関になっちゃうけどね!ダンブルドア先生&ハリーにゴメンナサイっ!
「」
伸ばされた手を取って立ち上がった。
学生の頃より少しだけ変わった目線に身体の成長を感じて。
あぁ、やっぱり私、生きてきたんだなぁ。
本当に、色々あったけどね。
そう思って笑いかけると、リドるんはその整った顔で綺麗に笑って、そして。
「――――――――――死ぬまで、一緒に」
私の、左中指の指輪へと口付けた。
変わらない紅。
・・・・・・・・・そうだね。
「きっと、死んでも一緒だろうね」
そう言ったらリドるんは笑った。
その笑みは私と少しだけ似ていて。
あぁやっぱり。
結婚は出来ないなぁとか思ったりした。
2003年8月9日