023:相容れないモノ
ど・ど・ど・・・・・・・・・・・・どうしよう――――――――――っ!!!
ぎゃあ!助けてくれ、キヨっ!覇者様を呼ぶのは気が引けるからキヨで!!
つーか今日の待ち合わせの相手はキヨだしっ!待ち合わせまであと5分だけど、ちょっとは先に来いっつーんだ!
キヨさえさっさとくればこんなことにならずに済んだのに・・・・・・っ!
あ・・・・・・・・・でも、やっぱり、キヨが遅く来てくれて良かったのかも・・・・・・?
だって、だって、だって。
目の前で飴色のふわふわの髪が揺れて。
ニコッと、まさに天使の微笑。
「どうしたの?」
声も何もかもが砂糖菓子。
周囲の視線がザクザクと突き刺さってくる。
ありがとうキヨっ!
おまえのおかげでこんな最高の美少女とお知り合いになれたよ――――――っ!!
今日はキヨとお出かけのため、寝過ごして朝食もとらずに家を出てきた。
約束の駅前についたのは待ち合わせ10分前で、ボケーっとキヨを待っていたならば。
な・ん・と!
お隣に私と同じように人待ち状態の美少女天使が!
おいおいおい、一体誰だよ、こんな美少女を待たせてる男は!
あぁもう許しがたい。こんな美少女を・・・こんな天使みたいに軽やかで美しくて可愛らしすぎる美少女を!
この場に跡部がいなくて良かった・・・。めちゃくちゃ跡部の好みのタイプだし。
ふわふわの、パーマとはとても思えないウェーブの、淡い茶色の髪。
白のクロップドパンツにカーキ色の背中が見えるカットソー。
籠バックとサングラス。丁寧に塗られている指先のマニキュア。
ウェッジソールのサンダルが細い足をさらに細く見せてるし!
ブレスレットと指輪とピアスが全部揃い。しかもブランド品と来た!
格好も全部もれなく可愛いけれど、彼女はそんなものだけじゃない。
顔が、本当に、めちゃくちゃ、ものすごく!
「・・・かわいぃ・・・・・・・・・」
通りすがりに呟いた大学生らしき男に激しく同意して首を振る。
目の前にいる少女は、私が14年間で見てきた限りランキングトップに輝くようなスゴイ美少女だった。
彼女はお名前をさんというらしい。美少女は名前まで可愛い・・・・・・。
私が男だったら本気で惚れてるね。今だけはちょっと自分の美少年容姿に感謝とかしてみたり。
さんと並ぶにはまだまだだろうけど、暇つぶしの相手として声をかけてもらうくらいにはオッケーが出てるみたいだし。
ありがとう、ママ上&パパ上!
「君は、ひょっとして恋人を待ってるの?」
見上げてくるアングルも美少女・・・・・・。自分とのあまりの違いに悲しくなりさえしないなぁ。ここまで違うとね。
男と間違えられるのも仕方ない。むしろ間違えたままでいて下さい。
「いや、友達」
「本当?彼女さんだったりしたら、私、迷惑だろうから・・・」
「いや、全然気にしなくていいよ。本当に友達だからさ」
ありがとう、と微笑む様子も美少女・・・・・・!
そこでボケーっとこっちを見ていた高校生らしい男子がクラッと倒れかけたよ。スゴイな、さん。
「さんこそ、彼氏待ってるんだったら・・・」
「・・・・・・ううん、彼氏じゃないの」
彼氏じゃないのか?でもこの雰囲気だとデートだと思うんだけど・・・・・・。
そう考えていたのが顔に出たのか、さんはその可愛らしすぎる顔を少しだけ困ったように微笑させて。
切ない声に胸が痛くなる。
「・・・・・・・・・私の、片思いなの・・・・・・」
誰だその男は!!許すまじ美少女の敵!さっさと出てきやがれ!!
「悪い、待たせたっ!・・・・・・・・・って、?」
おまえかよ、裕太っ!!!
え、っていうか裕太に彼女がいたのか・・・・・・。
いや、彼女じゃない?まぁ彼女候補ということで。私なら絶対にオッケーするだろうな。
裕太、おまえもさんみたいに可愛い子は今後の一生で絶対に出会えないぞ。ここで逃がすなよ!
「裕太」
現れたさんの待ち合わせ相手らしい裕太の肩にポンッと手を置いて。
そしてニッコリ笑ってみせた。
「さんを泣かしたら私がおまえを泣かすからな。肝に銘じておけ」
美少女の味方をして何が悪い。
だってこんなにも理想的な美少女を見たのは生まれて初めてだったんだよっ!
不思議そうな顔をした裕太とさんを送り出して、その後ろ姿を見送る。
あー・・・・・・・・・うん、裕太ならさんの彼氏になってもいい。裕太はいい奴だ。
すごくいい奴だからこそ、裕太には幸せになってもらいたいと思うし。さんもその点は同じだし。
どうかあの二人がうまくいきますように。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちゃん」
ようやく来たらしいキヨの声に振り返ると。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何て顔してんの、キヨ」
顔色が悪い、微妙に目もうつろ。
おいおいおい、どうした。何があったんだ?南さんや亜久津に何か言われたってここまでにはならないだろうに。
キヨはさっきの私が裕太にしたように、私の肩にポンッと手を置いて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・さっきの子、めちゃくちゃ美少女だったねぇ・・・・・・」
「あぁ、でも紹介はしないよ。彼女は裕太の彼女になるんだから」
「うん・・・・・・・・・うん、そう。・・・そうなんだ・・・・・・・・・」
キヨの返事は力なく、どちらかといえば残念がっているような様子ではなくて。
その疲れようは一体どうしたんだ、キヨ・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・ねぇ、ちゃん。知らないなら教えるけどね」
「何?」
ポンッと両手で私の肩を掴んで、キヨは言った。
それはそれは、人生に疲れ果てた男のような表情で。
「さっきの子は君といって、聖ルドルフ学院二年の、正真正銘の男の子だよ」
「おい。おまえと知り合いだったのか?」
「ううん、しらなーい。ただ裕太から見せてもらったプリクラで知ってただけ。だから声かけてみた。予想以上の美少年だね」
「は」
「知ってるって。女の子なんでしょ?向こうは俺のこと気づいてなかったみたいだけど」
「そりゃ気づかないだろうな・・・・・・」
「俺と裕太、恋人同士に見られちゃったよ。ふふふ、やった!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・どうしよう・・・・・・・・・・。
私、人間を信じることが出来なくなりそうだ・・・・・・・・・・。
2003年9月9日