018:私の欠片





黒い服、ずっと手元にありました。



肌色のストッキング。
ヒールの低いパンプス。
長袖のワンピース。
つばの広い帽子。



上から下まで黒に染まって。
鞄さえも黒に染めて。



私はようやく貴方に会いに行きます。



夏の日差しが強すぎて、長袖だとかなり暑い。
でも意識はそんなことを気にもしないで。
唇を噛み締めて、私は歩く。



・・・・・・・・・遅くなって、ごめんなさい。



もう何年も前のことなのに
貴方の笑顔、まだ瞼の裏に残っている。
別れの瞬間は傍にいられなかった。
いさせて、もらえなかった。



・・・・・・・・・ねぇどうして。
どうして貴方は逝ってしまったの。



貴方の笑顔の意味を判れなかった。
貴方の言葉の意味を判れなかった。
貴方の優しさの意味を判れなかった。



貴方はこんなにも手を差し伸べていてくれたのに。
私は自分のことだけを考えて、貴方に優しく出来なかった。



後悔だけが、心に残って。



この石の下に貴方がいるのね。
私、ずっと会いたかった。
会って、お礼が言いたかった。



貴方を愛してると、伝えたかった。



ごめんなさい。もう、遅すぎるのに。
気付けなくて、貴方に辛い思いばかりさせて。
それでもそんな様子を微塵も見せなかった貴方。
今更、愛しいと思うなんて。



「・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・・、先輩・・・・・・」



今まで泣くことさえ出来なかった私を
―――――私を
もう一度だけでいいから慰めて



・・・・・・・・・・・・・・・・・・貴方のことが忘れられないから。





2003年7月16日