012:喉





屋上への階段の途中で、先輩に会った。
先輩は不二先輩と菊丸先輩と同じクラスで、生徒会の副会長。
手塚部長の片腕。
そんな先輩は、俺よりニ・三段上からこっちを見ていた。
陽の光が翳る。



屋上のドアから入ってくる光が影を作って。
先輩の黒い髪がサラリと揺れる。
逆光の身体はなんだかいつもよりも細く見えて。
近づいてくる腕と手だけが視界に映る。
その、手が、俺の頬を撫でて。
先輩が笑ったのが雰囲気だけで判った。



手の平は頬を包み、指先が耳を擽る。
俺の髪を絡め取って、少しだけ引っ張る。
悪戯で優しい動作。触れる手がひんやりと冷たい。
気持ちよくて笑った。
先輩も笑った。



俺の手が目の前の腕に触れる。学ランとは違う生地。
手の平と同じ、体温の低い身体。
丸みを帯びた肩に、滑らかな首。
服の上から鎖骨をなぞると、先輩は擽ったそうに笑った。
俺も笑う。



柔らかな身体。
抱きしめるとさらに柔らかいことに気づく。
先輩が笑う。
耳元にかかる吐息がくすぐったくて、俺も笑う。



チャイムの音を聞きながら、俺たちは今日最初のキスをした。





2003年9月23日