010:烏





「ルキア」



呼ぶ声はとても綺麗。
死して死神となった今、外見などで年齢は計れないのだけれど。
容姿だけは自分と同じか、ほんの少しだけ年上だろう彼女に。
・・・・・・・・・ひどく、憧れていた。



「はい、隊長」
でいいわ」
「・・・・・・それは出来ません」



クスクスと楽しそうに笑う姿。
長く美しい黒髪が揺れて。
黒装束が白い肌を引き立てる。
見惚れて、しまう。



綺麗な綺麗な人
それは戦場でも
ベッドの中でも
この世のどんなところでも



綺麗な、人



「行ってしてしまうのね」
「・・・・・・・・・はい」
「残念だわ」



伸ばされた手に髪を梳かれて。
肌が触れる度に胸が高鳴る。
・・・・・・同性同士だというのに。



恋でも、しているかのよう。



「白哉に文句でも言いに行こうかしら。勝手に横取りしないでって」
「・・・・・・勿体ないお言葉です」
「本気で思ってるのよ?ルキアは私の可愛い部下だもの」
「・・・・・・・・・ありがとうございます」



右腕につけていた『一番隊』の腕章。
これを渡されたとき、どんなに嬉しかったことか。
ずっと憧れていた部隊。
憧れていた場所。
憧れていた、人。



「・・・・・・・・・隊長」
「何?ルキア」
「・・・・・・一つだけ、お願いしたいことがあるのですが」
「お願い?」
「─────はい」



小首を傾げた相手を見上げて。
その背に光を感じる。
あぁやっぱり、この人の傍にいたかった。
――――――――――ずっと。



「キスして、頂けませんか・・・・・・?」



私は今日、一番隊を去る。





2003年7月19日