12月24日
WHITE CHRISTMAS
「あー! 越前テメェ何一番でかいケーキ取ってんだよ!」
「まぁまぁ桃。今日は越前の誕生日なんだからいいじゃない」
「ふん・・・ガキかテメェは」
「・・・海堂もやめなって」
「大石―! 俺はこのチョコプレートの乗ったとこね!」
「判ったから英二、落ち着いて」
「もう10度右にナイフを入れると綺麗に8等分出来るな」
「・・・・・・・・・落ち着いて食べれないのか、おまえたちは」
大きめに切られたショートケーキ
一口、口に運んで
イチゴがちょっと酸っぱいけど
「・・・・・・うまいっス」
そりゃそうだろうってみんな笑った
和風の家に不釣合いのクリスマスツリー
俺の鞄のそばに置いてある大きなプレゼント
みんなからの
『誕生日おめでとう、越前』
今日は、俺の誕生日
神様の生まれた日
ついこの前、引退した先輩方に誘われた
桃先輩や海堂先輩もオッケーを出して
『一緒にパーティーしようぜ』
どうしようか迷ったけれど頷いた
だってもう予定が入っていたから
は、その日いないから
誕生日を一緒に祝う相手なんて、いないんだから
クリスマスと誕生日が半々なパーティー
「メリークリスマス」と「誕生日おめでとう」が一緒になって
笑い声が満ちて
いつもと同じように
楽しいと思う
楽しいと思う
楽しいと思う
なのになんで
「・・・・・・・・・すいません。俺、帰ります」
一斉にこっちを向いた視線
ケーキのイチゴがバランスを崩した
最後の一口
食べれそうにない
言葉にしたから想いが走る
加速して加速して止まる気配もなくて
皿を、置いた
「おいおいおい、何言ってんだよ越前」
桃先輩が信じられないように覗き込んできて
顔を背けてしまったのはきっと後ろめたかったから
俯いて
唇を噛み締めて
そっと肩に置かれた手
思わず振り払いかけた
止めたのは多分
その手が、ちょっとだけに似てたから
「家に、帰るの?」
涼やかな、声
「彼のところに行きたいの?」
少しヒンヤリとした、手
「越前」
細められた、目
「彼に祝って欲しかったんだよね?」
悲しそうな声だった
「・・・・・・――――――そんなこと、ない・・・けど・・・・・・」
悔しかった
「今も、楽しいし、ケーキも美味しいし、十分だと思う」
悔しかった
「先輩たちに『おめでとう』って言ってもらえて、嬉しかったし」
悔しかった
「がどうとか、そういうんじゃなくて」
悔しかった
「そんなんじゃ・・・・・・・・・なくて・・・」
言葉とは裏腹に帰りたいと心の底から思った
会いたい
「・・・・・・俺には、オチビの気持ち、判んない」
菊丸先輩の声に顔を上げて
「だってオチビとアイツって仲悪いじゃん。それなのに会いたいものなの?」
大石先輩が止めようと手を伸ばした
「会ったって悲しくなるだけじゃん」
瞳が揺れる
「だけど、行きたいならいけばいい。オチビにとってアイツがどうしても必要なんだったら」
「行けよ」
突き放すように言われて
心が痛んだけれど悲しめない
河村先輩がコートを渡してくれて
プレゼントも、渡してくれて
貰ってもいいのか、不安になった
「誕生日おめでとう」
ポンッとプレゼントを押されて
腕の中に仕舞われた
見上げれば手塚部長が俺を見下ろしていて
その目が、すごく穏やかだった
「・・・・・・・・・ありがとうございます」
声は完璧に震えていた
ごめんなさい
手塚部長
日本風の庭を走って
引き戸の門扉をこじ開けて
『道はわかるか』と声をかけられた気がした
ごめんなさい、手塚部長
背中を押してくれた、不二先輩
本当の気持ちを言ってくれた、菊丸先輩
優しさから止めようとしてくれた、大石副部長
コートを着させてくれた、河村先輩
電車の時間を教えてくれた、乾先輩
またなって言ってくれた、桃先輩
事故るんじゃねぇぞって見送ってくれた、海堂先輩
・・・・・・・・・ごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
俺は真っ暗な道を駆け出した
手の中のプレゼントが音を立てる
吐いた息が、白くなってすぐ消えた
あと少しで誕生日が終わる
2002年12月24日