12月24日





WHITE CHRISTMAS





、このケーキ美味いで。ほら、あーん」
「当然だろうが。俺の用意したケーキだぞ」
「跡部の家ってホントいい物ばっかだよなー。このチキンもすっごく美味いし!」
「はい、。シャンパン」
「ちゃんと食わねぇとデカくなれねぇぜ?」
「でもはちっちゃいままでも可愛いからいいよ〜」
「・・・・・・・・・どうぞ」



かけられる言葉に俺は頷いて
ブッシュドノエルを一口すくった
上品な甘さが広がって
「・・・・・・美味しい」
呟いた言葉にみんな笑った



天井まで届くようなクリスマスツリー
その元に置かれているカラフルなプレゼント
書いてあるメッセージはどれも同じで



『Happy Birthday,



今日は、俺の誕生日



神様の生まれた日



この日はずっと前から約束があった
跡部さんや、忍足さん、氷帝テニス部のメンバーと
の誕生日を一緒に祝いたいから』
そう言われて断るヤツがどこにいる?
ましてやとても大切な相手から言われたら
喜んで、受けるだろう?



誕生日を一緒に祝うべき相手なんて、いないんだから



みんなが俺の誕生日を祝ってくれて
ついでのように「クリスマスだね」って言ってくれて
優しさが溢れて
胸が温かくなって
すごく、幸せ



すごく、幸せ



すごく、幸せ





なのにどうして





真っ暗な部屋で身を起こした
周りには、ふわふわの布団にくるまって寝ている皆
芥川さんのズレ落ちている布団を、ちょっと直して
迷った挙句、立ち上がった
コートに伸ばした手は間違いなく震えていた



音を立てないように
みんなを起こさないように
部屋を、出る



「どこ行くんだよ」



肩が震えたのはきっと後ろめたかったから



振り向いた廊下
暖かそうなガウンを羽織って立っている姿
あぁ、本当に
本当にこの人は俺のことをよく判ってる



それが、嬉しくもあり
少し・・・・・・悲しい



「家に帰るのか」
一歩、近づいて
「アイツのところに行くのか」
鋭い視線、感じて

大好きな、声



「俺たちじゃ、アイツの代わりにはなれないのかよ」



心に響く



「・・・・・・―――――――そんなことっ・・・・・・!」
悲しかった
「そんなことないっ! 俺は、俺は本当にみんなが好きで―――――・・・っ」
悲しかった
「本当に本当にみんなが好きでっ! こうやって祝ってもらえてすごく嬉しくって・・・っ!」
悲しかった
「代わりだなんてそんなこと・・・・・・・・・っ」
悲しかった
「・・・代わりだ・・・・・・なんて・・・・・・・・・」



こんなことを跡部さんに言わせてしまった自分を、心底最低だと思った



殺してやりたいと思った



「・・・・・・バーカ」
ふわっと抱き寄せられて
「いいんだよ、余計な気なんか使わねーで」
慈しむような眼差し、感じて
「オマエラは家族なんだから、誕生日を祝うのは当然だろ」
温かな、言葉



「俺たちはオマエを愛してる。だからオマエは好きにしろ」



「ずっと、傍にいるから」



首に巻かれた柔らかい感触
正面で解けないように結ばれて
細くて長い綺麗な指が視界を動いて
よく、見えなかった



涙が浮かんで、見えなかった



「Merry Christmas」



一度だけきつく抱きしめられて
緩やかにその腕を放されて
背中を、押された



行け、と言われた



「・・・・・・・・・Merry Christmas」



声は完璧に泣いていた
ありがとう
跡部さん



絨毯の敷き詰められた廊下を走りぬけて
所々に小さな灯りがついていて
玄関と門の鍵はかかっていなかった



ありがとう、跡部さん



寝ていないのに動かず俺を見送ってくれた、忍足さん、宍戸さん
見つけやすいところにコートを移動させておいてくれた、鳳さん
入り口まで辿りつきやすいように移動していてくれた、樺地さん
起こされても寝たフリをしていてくれた、向日さん、芥川さん



・・・・・・・・・ありがとう



ありがとうありがとうありがとう



俺は真っ暗な道を駆け出した
マフラーが風に揺れる



涙が、頬を伝った





あと少しで聖夜が終わる





2002年12月24日