屋上のドアを開けた佐藤成樹の目に飛び込んだのは、快晴の青空ではなく女生徒同士のキスシーンだった。
「もうかりまっか?」
「びっくりした」
ほっとしたように笑うのは、隣のクラスの少女。
今は目の前で横になっているサッカー部のマネージャー、小島有希の話によく出てくるので知っている。名前は、確か。
「・・・・・・殺してないやろな、」
「まさか! 有希ちゃんは友達だもん。本当はエネルギーだっていらないって言ったんだけど、契約だからって」
「小島はめっちゃ好きみたいやしなぁ」
誰を、とは言わない。
いつもは凛々しい顔を崩さない彼女が、今は少女の膝に頭を乗せて穏やかな寝息を立てている。
大親友なのだと話には聞いていたけれど、まさかこういった意味合いも含んでいたとは。
「感謝しぃや。俺以外の奴やったら言いふらされたで」
少女たちから少し距離をとって座れば、今度こそ周囲には青空が広がる。
「うん、感謝します」
「最近どうなん?」
「ぼちぼち、かな。ちょっと獲得が難しくなってきてて」
「魔女っ子に薬屋、地獄少女に次元の魔女」
「『あなたの願いを叶えます』は悪魔の専売特許だったのに、やっぱり時代の流れかなぁ」
「せやから『ちょびっとプラン』?」
「お客様のニーズに合わせて、良心と安全がモットーです」
「さよか。まぁ頑張れや」
気の抜けた応援にも、少女は笑う。
その顔はとても可愛らしく、とてもじゃないが「悪魔」と呼ばれる生き物には見えない。
「佐藤君の方はどう?」
「こっちもぼちぼちやな。自分と同じで最近は少なくて困りもんや」
「人間もどんどん変化していくもんね」
「やり難い時代や」
むずっと少女の膝の上で寝息が乱れる。
そろそろ目覚めそうな気配に立ち上がった。
「ほな、俺は先に戻るわ。小島によろしゅう」
「佐藤君こそ、風祭君によろしくね」
にっこりと二人は互いに微笑みあって。
「またな、悪魔ちゃん」
「またね、天使さん」
天敵なはずの互いの健闘を祈りあった。
シゲさんは天使。間違った方向へ進みつつある人間を修正するのがお仕事。エネルギー源は心が綺麗な人の放つ空気で、現在は風祭によって補給中。主人公は普段は首筋から摂取しますが、今回は有希嬢の希望により唇から直接だったようです。
2006年4月17日