トリガーを引く、指の力。
弾け飛ぶ血潮、絶たれる命。
「・・・・・・こんな簡単なこと、どうしてキラは躊躇ったりしてたのかしら」
首を傾げ、フレイは呟く。
彼女の目の前では、今まさに生を終わらせられた人間が、物質と化して転がっていた。





Thanks be to God!





プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル直属部隊、アドボロス。
漆黒の最新戦艦を持つその特殊部隊は、戦闘力の高さとは逆に表舞台に立つことはない。
それは来るべき戦いのためであり、また隊に属している軍人たちの顔ぶれがそうさせた。
すべてが黒に統一された中で一人だけ純白を纏うのは、隊長の
先の大戦で反逆者として扱われたラウ・ル・クルーゼの腹心。自らもスパイとして活動していた彼は、裁判にかけられれば死刑は免れない。
そのに従う、オルガ・サブナック、クロト・ブエル、シャニ・アンドラス。
彼らはZAFTですらなく、敵対する地球連合の兵士だった。薬と手術によって強化されたつぎはぎのパイロット。
そして唯一の女性仕官、フレイ・アルスター。
彼女は地球連合大西洋連邦事務次官の父親を持つ、普通の一般人だった。
コーディネーターばかりで構成されているZAFTの中で、彼らの存在はあまりに異質だった。



銃の撃ち方、ナイフの構え、肉弾戦に暗殺の仕方。
それらをフレイは必死で学んだ。かつてカレッジにいた頃よりも懸命に、何よりも自分のために。
最初に殺した人間を覚えている。浴びた血の臭いを忘れない。
それでも良いとフレイは思う。自分は選んだのだ。誰でもない、自分のために。
罪に塗れようと、ただ一人の傍で生きると決めた。
「ありがとう、キラ」
トリガーを引きながら、フレイは微笑む。
「あなたが守ってくれたから、今のあたしがいるのよ」
音も立てずに、風穴が二つ。
「ありがとう、キラ」
止めに、一つ。
「ありがとう」



感謝はキラに。その他すべてはただ一人のために。
殺してまで得たい、そんな想いが存在するなんて知らなかった。



「―――行くぞ、フレイ」
かけられる声に胸がときめく。屍ばかりの場所でも関係ない。好きだから、愛しているから反応するのだ。
黒い瞳が自分を映し、そしてまた前を向く。そのまっすぐな後ろ姿が大好きで。
「今行くわ、
駆け寄る度に感謝せずにはいられない。



ありがとう、キラ。
あなたが守ってくれた命で、あたしはあたしの為に生きるわ。





久堂は戦うフレイが大好きです。
2006年4月8日