奴を語るティータイム





「俺には、同じ年の従兄弟がいてね」
遠慮も何もない仕草で―――かといって別に粗野というわけではなく、どちらかと言えば優雅にさえ見える動作で―――ヴェルデの敬愛するドン・ヴェレーノことは、チョコレートを一つ摘み上げて自身の口へと放る。
造形美の素晴らしいそれも、わずか三回の咀嚼で喉へと流されていく。けれども食べ物としての役割は十分にこなしたし、の栄養の一部として利用されるならそれで十分だろうとヴェルデは思う。
「これがまた似なくていいとこが良く似てて、似ていいとこが全然似てないんだよ。あいつは外見は美青年だしな」
「パパだって十分美青年だよっ!」
「相応しくない賛辞は時に侮辱だ、ヴェルデ。俺は美青年じゃなくて美少女だろ」
確かにふわふわの髪や大きな目、愛らしい容貌は少女めいているのだけれど。
それでも自分で「美」という形容詞をつけてしまうところが、である所以だろう。
もちろんそれを否定しようとなんて思わない。ヴェルデにとってはが至上であり、それ以外の存在などないのだから。
「・・・・・・その人は今は、何をしてるの?」
「さぁ? とりあえず東京を治めてるだろうね。いい加減に統治者の一人なんかじゃなく全権を掌握してもいい頃だろうに、欲の無さは誰に似たんだか」
まぁ、間違いなく親父じゃなくて祖母似だろうけど。
はそう呟き、ガラス皿に乗っているチョコレートをヴェルデの方へと押しやった。
「俺が暴力を好むのに対し、あいつは覇権を好む。自分のシミュレートしたとおりに人や物を動かすのが好きで、ときどき反抗されると酷く喜ぶ。基本的にマゾだね。敵がいないと暇で暇で仕方ないタイプだ」
きっとその従兄弟を思い出しているのだろう。の顔は穏やかで、くつくつと笑みを浮かべては肩を揺すっている。
そんな彼を珍しい思いでヴェルデは眺めた。どうやらこの主は、その従兄弟とやらをずいぶんと認めているらしい。
下僕ではなく、対等の相手として。
「だからこそ統治者の一人のままでいる。そのポジションなら他の統治者もいるし、争いには事欠かないしね」
「ヴェレーノには引き入れないの?」
「言ったろ? 俺たちは似てるんだって」
チョコレートを一つ摘み、ヴェルデの口元へと押し付けながら、は笑う。



「俺とあいつは、敵がいないと暇で暇で死にそうなのさ」





血縁的には従兄弟ですが、現在は戸籍上の兄弟です。
2006年3月29日