目の前でぱたぱたと揺れるものに、は釘付けになっていた。
いつも一緒にいるイルミは、今は列車のチケットを買いに行っている。
「ちょっとだけだから待ってて」と言われ、ソフトクリームを受け取って。
は駅前の広場でベンチに座り、彼の帰りを待っていた。
そんな彼女の前で、ぱたぱたと揺れるもの。
それはおそらく、猫の尻尾。
猫の恩返し(『天使とピストル』アンケート御礼夢)
向けられる視線の多さに半ば感心しながらも、ネフェルピトーはそれらを無視していた。
どうやらキメラアントである自分たちの容姿は、人間とずいぶん違うらしい。
ネフェルピトーはそれを自覚しているし、その差異故に向けられる好奇の視線などどうでもいいと思っている。
彼にとって人間とは餌であり、ただの家畜同然なのだから。
王であるメルエムに二度手間を取らせないようにこの町の様子を見に来ていたのだけれど、この人の多さなら王も満足するだろう。
もしかしたらレアモノも見つかるかもしれない。
そう考えて、ネフェルピトーが踵を返したとき。
ぽて、と尻尾に何かがぶつかったのを感じて、彼は後ろを振り向いた。
好奇心に負けて出してしまった手が、ちょうど歩き出そうとした目の前の人物にぶつかってしまった。
しかも、尻尾に。
触ってみたいと思っていたけれど、これはこれで困ってしまい、は俯く。
けれど目の前の人物がそれに合わせてしゃがみこんだので、今度は目が合ってしまった。
猫のように大きな目と、頭に生えている猫のような耳。
ぱたぱた、と尻尾が動く。
「・・・・・・レアモノだ」
小さく呟かれた言葉に、は首を傾げる。
興味深そうに、目の前の相手は大きな目を瞬かせた。
尻尾に触れてきた小さな人間がレアモノだった。
レアモノ自体が少ないのに、すごい確率だとネフェルピトーは思う。
しゃがみこんで顔を覗きこめば、銀髪の人間は銀色の瞳をしていた。
綺麗、とネフェルピトーは思う。今まで見てきた人間の中で、これが一番綺麗、と。
「何食べてるのカニャ?」
子供の持っている白とクリーム色の物体は、おそらく食べ物なのだろう。
そう見当を付けて聞いてみると、子供はぱちぱちと目を瞬いた。
小さくて綺麗、とネフェルピトーは思う。
しかし重なった視線は再び違う方を向いてしまって、彼は少しむっとした。
辿ってみればその先に自身の尻尾があるのに気づいて、ふむ、と頷く。
自分にとってはなんてことない身体の一部だが、人間であるこの子供にとっては珍しいのだろう。
そう思ってぱたぱたと動かせば、案の定子供は銀色の目を輝かせた。
「それくれたら、触らしてあげるよ?」
手の中の食べ物を指差して問う。
子供はしばらく悩んでいたようだけれど、小さく頷いて食べ物を差し出してきた。
受け取る際に触れ合った手は頼りなくて、握ったら潰れそうだとネフェルピトーは思う。
約束どおり自身の尻尾を差し出すついでに思いついて頬をくすぐってやれば、子供は楽しそうに笑った。
「君はこれからどこに行くのカニャ?」
問われて、は先程イルミに言われたことを思い出す。
確か彼は「南と北、仕事が二つ入ってて行かなきゃいけないんだよね。でもどっちにもテーマパークがあるし丁度いいや。はどっちの遊園地に行きたい?」と聞いてきて、二つのパンフレットを見せてくれた。
お仕事なんだからイルのいい方でいいよ、と伝えると、今度は「仕事は二の次で、遊園地が先だよ」と言われて。
結局は近くにテーマパークだけでなく、温泉やプールなどの総合施設がついている方を選んだ。
あれは、確か・・・・・・。
「南?」
方角を指差すと、猫のような人はちゃんと意味を汲み取ってくれた。
こくりと頷けば、大きな瞳をぱちぱちと瞬かせる。
細くなった黒目が本物の猫のようで、は腕の中のクマを抱きしめて感心した。
触ればきっとふわふわの耳を寝かせて、彼は言う。
「じゃあもっと、どんどん南に行きなよ。王もそこまで辿り着くにはまだ時間がかかるだろうし」
首を傾げたの頬を、温かな尻尾がくすぐる。
「君は可愛いから、逃げた方がいいよ」
捕まったら食べられるより孕まされそうだしニャ。
小さく呟かれた言葉の意味が分からずに、はただ大人しく撫でられていた。
その後、列車の中でイルミに一連の出来事を伝えたは、目的地のテーマパークよりさらに遠く離れた南へと連れて行かれるのだった。
アンケート内容(結果)
1:イルミの犯罪境界線(キス・ほっぺにちゅう・どこまででも)
2:旅団で一番好きなキャラ(クロロ)
3:一番好きなキャラ(キルア・イルミ・クラピカ)
4:めちゃめちゃ時間軸(違和感がなければ)
5:キメラアントは?(好きなのもいる)
6:好きなキメラアント(猫・コルト・チータ)
7:登場して欲しいキャラ(キルア・クラピカ・ヒソカ)
2005年3月7日