最近知り合った男の子はとても綺麗で可愛い子でした。
セピア色の髪と明るい関西弁が印象的で。
そんな彼は当然のように人気があって沢山の人にかまわれていました。
そして自分もそうしたいと思う一人で。
どうすれば彼の視界に入ることが出来るんだろう。
考えた挙句、ここは一つ先手を打ってみることにしました。





50000hit・セピア番外編『台風注意報』





「こんにちは、君。部活お疲れ様」
「・・・・・・鳳さん。あんさんもエライ暇な人やなぁ」
呆れた表情で返された答えに鳳長太郎は苦笑する。
「今日でジャスト2週間やで。氷帝は部活サボっても怒られへんの?」
「部活はちゃんと出てるよ。うちは基本的に自主練だから、早く終わらせるようにしてるんだ」
「俺に会うために?」
君に会うために」
断言された言葉に満足したのか、はニパッと笑った。
その笑顔を見られただけで、わざわざ部活後の疲れた体を引き摺って青学まで来た甲斐があるというもの。
鳳も嬉しそうに微笑した。



先述のとおり鳳長太郎が夕暮れどきに青学の正門前に現れるようになって丁度二週間である。
千鳥格子のズボンに校章入りのワイシャツ。
都内でも指折りの有名校の制服は部活帰りの生徒たちの興味をいやがおうにも引いてしまって。
ジロジロと見られるだけならまだしも、女子生徒に声をかけられることもしばしばあって。
けれどそれにもめげずに鳳は忠犬のごとく青学へと通っていた。
ただ一人、に会うために。



「ね、君。今度の日曜日は暇? もしよければ映画の券があるんだけど一緒に行かない?」
「残念。日曜日も部活なんや」
「その後でもいいよ。何時でも」
ニコニコと笑いながら小柄なを見下ろして。
「・・・・・・鳳さん、そないなこと言うて先週の日曜は動物園に誘ってくれたやん。土曜日は水族館やったし。いい加減チケット代が無駄やなーとか思わへんの?」
「思わないよ。君と一緒にいられるならお金なんか関係ないし」
「・・・・・・・・・これやから金持ちは・・・・・・」
が疲れたように肩を落としてため息をつく。
今週は映画、先週は動物園と水族館。
鳳の予定では今後はケーキバイキングや遊園地なども計画されていて。
そのための金と労力は厭わない。
すべては、彼のため。



「もっと仲良くなりたいんだ。君と」
穏やかな瞳でまっすぐと見つめて。
「・・・仲良くねぇ」
「うん。君のことをたくさん知りたいし、君にも俺のことを知ってもらいたいんだ」
「『俺に好きになってほしい』やなくて?」
意地悪そうに目を細めて鳳を見上げて。
が試すように問いかける。
鳳は一瞬真顔に戻って、それにも深くゆっくりと頷いた。



「好きになってほしいよ」



小さな声で熱く告げる。



会う度に惹かれていく自分が判る。
今日も明日も明後日も。
メールを送る度に、受け取る度に、電話越しで話す度に。
もっともっと君を好きになる。
これ以上、限界なんてないくらい。



「・・・・・・好きだよ」



視界の隅に小さな影が映って。
ちょっとだけ悔しくて、ちょっとだけ出し抜きたくて。
見上げたままの相手にゆっくりと背を屈めて。
チュッと軽い音をたててキスをした。



「―――――――――――――――ッ!!!!!!」



言葉では表現できないような叫び声が後ろから聞こえてきて、は肩をすくめた。
振り向けばこちらへと向かってダッシュしてくる親友の姿。
「・・・判っててしたやろ、今の」
「まぁね。だってズルイと思わない? 越前君は年と学校が同じだってだけで君とずっと一緒にいられるんだから」
「せやな。・・・・・・でも」
苦笑する背の高い相手の襟を掴んで引き寄せて。
紅い舌がひらめいてペロッと小さく嘗め上げた。
たった今、触れたばかりの唇を。
そうして艶然と微笑んで。
「子供チュウじゃ俺は落とせへんよ?」



呆然として頬を赤くする相手に苦笑を一つ。
あと20メートルの位置まで迫ってきている親友に笑いを一つ。
ポンッと高い背中を叩いてやって。
「青春台駅前に3時」
満面の笑みで微笑んで。
「楽しみにしとるで、鳳さん」



『早く逃げへんとリョーマにシバかれるで?』というの言葉に鳳はやっと我に返って。
今言われた台詞を反芻して、笑顔になって。
「また日曜日にね、君」
「闇討ちに気ぃつけてや」
「うん、ありがとう」
手を振って幸せそうに微笑んで。
そして鳳は駆け出した。
今にも飛び掛からんとしているの親友から逃げるために。



ッ!」
「何やリョーマ、そんなに慌ててどないしたん?」
「どうしたもこうしたもないよ! 何あんな奴とキスしてんのさ!?」
「んー・・・何やこうなぁ、可愛かったちゅうか」
「・・・・・・?」
「鳳さん、近所で飼ってるゴールデンリバーの花子にそっくりなんや」
「・・・・・・だからってキスさせなくてもいいじゃん」
「別にいいやん、犬とのキスなんて挨拶みたいなもんやろ」
「相手はそう思ってないだろうけどね」
大きくため息を一つついて。
すでに見えなくなった相手に敵意を燃やして。
「・・・・・・ねえ、
「何やリョーマ」
って猫好き? 好きだよね? 大好きだよね?」
「・・・・・・・・・」
「犬だけ贔屓なんてしないよね?」
「・・・・・・・・・」
ニッコリと笑った親友に疲れたようにため息をついて。
は小さく肩を落としたのだった。





日曜日に行われたデートには何故か黒猫が一匹ついてきて。
犬と猫の間で大戦が勃発するのだけれど。
それはまた別のお話。





2002年11月15日