袖触り合うも多生の縁





ざわざわと人が溢れる通りを、越前リョーマ、壇太一、そしては歩いていた。
ちなみに位置としては右からリョーマ・・太一の順である。
横に並んで歩いたら通行の邪魔になるのだが、彼らのサイズが標準より小さいせいか、今のところ苦情などは出ていなかった。
それよりもむしろ、すれ違う女性陣からは「可愛い〜!」なんて声まで頂いてしまって。
リョーマと太一はそれを当然のことと無視をして、そして両脇からをガードしつつ歩きつづける。
「結構面白かったね、あの映画」
手首でシルバーのバンクルを揺らしながらリョーマが言う。
「あ、リョーマ君もそう思ったデスか?僕も結構面白かったと思うデス!」
「俺的には中盤に出てきた女の人が好き」
「恋人に車で轢かれて、内臓が飛び出てた人デスか?」
「うん、そう。中々にグロデスクだったしね」
「僕はー・・・そうデスね、この人が良かったデス」
片手に持っていたパンフレットを広げて太一が指差す。
リョーマとが覗きこめば、そこには背後から斧で頭を割られている男の姿が。
「叫ぶ姿がリアルで良かったデスし、結局は復讐も出来ないヘタレだったデスし」
「あぁアレ。ホント情けなかったよね」
君は誰が良かったデスか?」
太一が振り返り、リョーマが振り返る。
二人の視線を受けながら、は少し考えてから口を開いた。
「・・・・・・・・・OLの、お姉さん」
「「あの屋上から飛び降りた」」
二人の声が重なった。

ちなみに本日リョーマ・・太一の3人が観に行ったのは『恐怖のリベンジ』という超B級ホラーである。(グロデスクなシーン満載の)



そろそろ夕日が赤く染まり始めたので、3人は駅へと向かって歩き出す。
所詮は中学一年生。夕飯時刻にはサヨウナラ。
君は映画とかよく観に行ったりするんデスか?」
今日一日を振り返りながら太一が行く。
リョーマも同じように思い返してを見る。
「そういえばそうかもね。って映画館に慣れてるみたいだったし」
観やすい座席とか、予告の時間とか、グッズ販売のこととか。
は今日はサイドで二本細く揺られている三つ編みを揺らして答えた。
「・・・・・・侑士先輩が、好きだから」
「侑士って、あのダブルスの忍足・・・だっけ?」
コクンとが頷く。
「侑士先輩が映画好きで、ときどき一緒に行ったりするから」
「どんな映画を観るデスか?」
「・・・・・・恋愛映画。侑士先輩が、好きだから」
ちなみに彼らが本日観たのは(以下略)



ふと視線を感じて、リョーマは顔を上げた。
行き交う人々の中で一際強く見られている気がする。
それは決して不快なものではなく、けれど挑戦的に挑んでくるようなもので。
「どうしたんデスか?リョーマ君」
太一の声が耳に届いたとき、人波が途切れて目が合った。
―――まっすぐにこちらを見ている、眼と。
切り取られたかのような一瞬が消え、リョーマの視界を人が横切る。
すでにキツイ眼差しはなく、向こうには髪を翻して歩き出す少女が見えるだけ。
「・・・・・・岳人先輩」
がポツリと呟いた。
「岳人って、ダブルスのですか?」
「うん。今、いたから」
がリョーマと同じ方向を見ながら答えを返す。
三人の視界からは、すでに岳人も少女も見えなくなっていた。
リョーマが眉を顰めてつぶやいた。
「・・・・・・・・・ナマイキ」
それは果たしてどちらに対してのものなのだが。



「じゃあリョーマ君、君、また今度デス!」
「次はネズミーシーとかにする?あぁでも遊園地は3人じゃハンパだっけ」
「・・・・・・六角の、葵君を誘うとか」
駅前で手を振って、子犬と黒猫とバンビはお別れ。
「じゃあまたデスっ」
「じゃーね」
「・・・また、ね」
楽しかった一日もこれで終わり。

彼らは別々に、けれど十分にご機嫌な様子で帰路につくのだった。






Everyday Life→決戦→?