袖触り合うも多生の縁
なんだか猫のような鳴き声を発しながら立ち去っていった男を眺めて、鹿目筒良は深く深く溜息をついた。
それはこの広い地球の中で初めて自分と同じ人類を見つけたかのような喜びと哀しみに満ちたもので。
「判る・・・! おまえの気持ち、痛いほど良く判るのだ!」
自分の想い人である少女に『可愛い』なんて言われてしまう男。(しかも純粋に、裏の意味なんてものは全くなく)
そんな情けない話があって良いものだろうか。
いや、ない!
「筒良、問題集あったよー!」
駆け寄ってくる可愛らしい少女を視界の中心に収めながら、鹿目はもう一度深く頷いて。
「猫男・・・・・・おまえの気持ち、本当に良く判るのだ」
もう一度会う機会があったら互いの恋愛について一昼夜話し続けることが出来るかもしれない。
そう思いながら鹿目は自分の想い人である少女に歩み寄った。
「欲しかった問題集も手に入ったし、予備校の時間までまだあるけどどうしよっか」
西洋人形のような顔立ちで微笑みながらが首を傾げる。
本人の性格からまったくもって計算などされていないのが判っているのに、鹿目はその度に顔をさり気なく赤くして。
「と、とりあえず昼ご飯を食べるのだ」
「うん。筒良は何が食べたい?」
「ファーストフードは嫌なのだ」
「じゃあラケルにしよっか。ハンバーグとおこげオムライス!」
「うん、じゃあ行くのだ」
少し迷った挙げ句、本当にどうしようか瞬間的に悩んだ挙げ句。
鹿目はに向かって手を差し伸べた。
野球ばかりやっていて、硬くなってしまった手の平だけど、今は。
そっと重ねられる柔らかさに、ひどく幸せな気分になって。
照れたように微笑むに脈がないわけではないのだ、と鹿目は思う。
その点ではさっき本屋で見た猫男より自分はリードしているな、などと五十歩百歩なことを考えて。
西洋人形とぬいぐるみとの、(端から見れば)デートの開始。
「ねぇねぇ筒良! あの人見て!」
「どの人なのだ?」
「あそこにいるずごく奇麗な女の人! すごい、本当に美人だぁ・・・」
「(の方が可愛いのだ)」
「すごいね、何だかお姉様って感じだね」
「むしろ女王様に見えるのだ」
「私もあんな風になりたいなー・・・・・・」
「!!!!!」
可愛くて可愛らしい少女のとんでもない発言。
たしかに向こうの広場に見える女性はものすごく美人で。
スタイルもよくて雰囲気が何より気高そうで。
文句なしに惹かれるのかもしれないけれど。
「、早く行くのだ!」
「え、何、筒良?」
「はーやーくーいーくーのーだー!!」
柔らかい手を引きながら例の人物とは正反対の方向へと競歩並みにダッシュ。
ハテナマークを飛ばし続けるに鹿目は思った。
・・・・・・・・・言えはしないのだけれども。
は、のままで十分可愛いのだ!
この一言が言えない点で自分はさっきの猫男に負けているということに彼は果たして気付いているのだろうか。
とりあえず、ここにも恋人同士にはまだちょっと届かない二人がいるのであった。
The ups and downs of life→クラスメイトの恋人→?