袖触り合うも多生の縁





人混みの中に見なれたセピア色の髪を見つけて、リョーマは軽く手を挙げた。
走りよってくる親友に不機嫌そうに眉をひそめて。
「遅いよ、
「堪忍や、リョーマ。何やめっちゃカッコえぇ人ら見かけてな、ちょお余韻に浸ってたん」
「カッコイイ人? 男?」
「男の二人連れや。片方は背ぇ高くて男前で、もう一人は細身で美人さんなん。単品でも目立つのにセットでおるんやで?こりゃもう見とかなあかんって思うて」
「それで俺との待ち合わせに遅れたってわけ」
「せやから堪忍やって」
何度か重ねて謝れば、もとから本気で怒っていたわけではないリョーマもちゃんと許して。
そしてそのまま人の行き交う通りへと足を進める。
めずらしく部活のない今日は適当にブラブラして遊ぼうという計画を立てたはいいものの、時間にルーズな二人は約束の時間よりずいぶんと後に落ち合った。
それはまぁ、の不意の出会いを差し引いても。
「とりあえず昼ご飯でも食べて、それからどこ行くか考える?」
「せやな。極貧の中坊の昼はマクドで決まりや」
「定食って手もあるけどね。吉牛とか松屋とか」
「松屋えぇなぁ」
「じゃあ決まり」
お小遣いの限度も決まっている中学一年生。
安い店を求めてテクテクと歩いていくのだった。



「あ、菊丸先輩や」
「ホントだ。っていうか本屋に入っていくんだけど」
「何やちょお意外やな」
「行くよ、
「もちろんやで、リョーマ」



見なれた先輩が似合わない場所へ入っていくのを見つけた後輩二名は、キラリと目を光らせて。
とりあえずお昼ご飯はまた後で。
バレないように持ち前の反射神経を発揮して追跡開始。
「・・・・・・漫画売り場やないみたいやな」
「本当に珍しいね。菊丸先輩も小説なんか読むんだ」
「あそこらへんは・・・推理小説やないんか?」
「推理小説・・・。似合わない」
「正直、似合わへん」
そんな失礼なことを考えながらも、真剣に本を選んでいる後ろ姿を邪魔することは気が引けて。
菊丸には声をかけずにとリョーマは元通り昼食への道を辿るのだった。
ここで声をかけておけば、もっと楽しい出来事があるのに、なんてことは露ほどにも知らずに。
菊丸にとっては幸運で、&リョーマにとっては微妙につまらない昼下がりのこと。



「俺、豚丼つゆだく」
「俺はカレーの大盛りで」



午後の予定を立てながら、二人は仲良く昼食を食べるのだった。





GIFT→セピア→?