袖触り合うも多生の縁
「今日は良い日になる!」
朝起きるなりそう宣言した西城敦に連れられて、は青山にある実家を後にした。
隣を歩いているのはものすごくご機嫌な西城で、その足取りは行く先など決めていないのに何故だかちっとも迷わない。
とりあえず今週はオフなので大丈夫だろうとは考えてからついていく。
「それで今日はどこへ行く気?」
「まず最初は高田馬場で古書めぐりだ。ラーメンの美味しい店があると聞いたからそこで昼を食べ、午後は新宿デパートにてゴッホの向日葵を見ようじゃないか」
「西城にしてはまともなプランだね」
「その言われ方は不本意だぞ、クン。西城がいつなんどき無茶な計画を立てたと言うのだ?」
「胸に手を当てて考えてみたら?」
楽しそうに会話をしながらのんびりと足を進める。
久しぶりの祖国は相変わらず懐かしくて、けれど帰ってくる周期も前に比べたら短くなったなと思う。
それはきっと、一緒にいて楽しいと思える彼等と出会ったから。
「ゴッホを鑑賞した後はどこかの学校にでも行ってみようか」
「うむ、そうだな。一度くらい顔を出しておかないと後がマズイ」
「帰国の報告もしてないしね」
「・・・・・・行きたくなくなるようなことを言わんでくれ」
手荒い歓迎を想像してか、顔色を一瞬だけ悪くさせて。
けれど二人してやっぱり楽しそうに笑った。
「西城、ぶつかるよ」
「おぉ! すまない、失敬した」
「や、俺かて余所見してたし。すんませんでした」
「お互い様だな」
小柄な少年に謝って、笑みを浮かべて。
セピア色の髪の毛とすれ違って先を急ぐ。
「関西弁だったね。あの髪の色、どことなくシゲ君を思い出すな」
「シゲ少年は金髪だがな。中々に整った容姿だったし、さぞかし学校ではモテるだろう」
「中学生くらいかな。懐かしいね」
「学ランは言うまでもなく、我々は制服とは無縁だからな・・・」
小学校卒業と同時にヨーロッパへと放り投げられた二人は、制服のない地元の学校へと入れられて。
そういえばユニフォーム以外でその手の服を着たことがない。
今さらながらに不思議な人生だ、などと考えてもみて。
「でも俺はそれがいいよ」
「西城とて同じだ。この生き方に不満はない」
今までとこれからに微笑を浮かべて今は道をたどる。
親友がいて、サッカーが出来て、たまのオフはこうしてゆっくり過ごせて。
普通とは言いがたい生活かもしれないけれど、でもこれで十分だから。
「そろそろ店の開く時間だ。行くぞ、クン!」
「判ったよ、西城」
いつまでもずっとこうして走っていけますように。
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