「そこのオネーサン」
・・・・・・・・・あぁナンパか。やっぱキヨと跡部の他にもしてる奴っているんだな。
まーいいさ、さっさと帰って新作ミステリーを読もう。
でもって再放送サスペンスを見なくては。
明日は友人とその話をしようって約束してるし。破ったら怖いからなぁ、彼女は。
さくさくっと帰るとするか。
「無視すんなよ、綺麗なオネーサン」
綺麗なお姉さんがいるのか。そりゃまぁナンパには靡かないだろ、美人さんなら。
顔が良いならともかく、この手の古風なナンパをする奴はろくな奴がいないし。
これで無理やり連れて行こうとしたらその時は助けるけどさ。
だから早く帰ってテレビを見なきゃなんだって。
「そこの皮パンツに黒シャツ、極め付けに黒ジャケットのオネーサン。ちょっとは振り向いてくれたっていいんじゃねぇの?」
ほほう、そのお姉さんはこれまたゴツイ格好をしていらっしゃる。
まるでメンズ物の服装のようで・・・・・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
皮のパンツ・黒シャツ・黒ジャケット、でもって黒ブーツだよ。
全身黒ずくめの格好。
まさか、まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか。
・・・・・・・とりあえず、確認をするだけしてみようかと思って、おそるおそる振り向いてみた。
そうしたらまぁ、私の目の前にはタレ目で黒髪のまぁ美形のお兄さんが立っていて。
「やっと振り向いたな、美少年チックなオネーサン」
ニヤリと、目の前の男が笑った。



・・・・・・・・・・・・一目で見抜いた人、ずいぶんと久しぶりだなぁ・・・。(現実逃避中)





160000hit・学園天国番外編『母国語くらい正しく使え。』





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!?(帰還)
私は今まで何をしてたんだ!?
今日は早く帰って再放送サスペンスを見なくてはいけないのに!
でないと友人にケーキを奢る羽目になりそうだというのに!
それなのに何で私はカフェテラスで優雅にカプチーノなんて飲んでたりするんだよ!?
「そんなの、オマエが頼んだからだろ」
「・・・・・・ケーキを奢るのが?」
「カプチーノが」
そうだよな、私が自分からケーキを奢りたいなんて言うわけないし。
今月のお小遣いもそれなりに必死だからどうにかやり繰りしないといけないんだよ・・・。
こんなとこでカプチーノに小金を払ってる余裕なんてないんだよ。
なのに何で!
何でウェイトレスさんは私の目の前にシブーストを置くんだよ!?
このキラキラしたケーキは一体何なんだ!!
「俺の奢りだから食えば? 女に払わせるわけねぇだろ」
「・・・・・・・・・いや、身も知らない人に払ってもらう理由もないし」
「武蔵森学園中等部三年、三上亮」
「青春学園中等部二年、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・名乗っちゃったよ・・・・・・。
何かコレは。跡部のときと同じじゃん!
これでまた済し崩し的に連れまわされたりするのかよ!?
どこまで不幸なんだ私の人生は!!
「なんだ、年下かよ」
三上さんが拍子抜けしたようにコーヒーを飲んで肩を竦めた。
「ゼッテー年上だと思った。背も高いし」
「身長は仕方ないっすよ。好きで伸びたんじゃない」
「オマエ、いくつ?」
「173っす」
「俺より1センチ高いか」
ムカつく、と三上さんが呟いた。でもそれってどうしようもないことだし。
桃だって身体測定のたびに文句言ってるんだからさ、私にはどうしようもないことなんだよ。
「で? さっきそんなに動揺したってことは俺の勘に間違いはなかったみてぇだな」
ニヤリ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・三上さんのこのスマイル、誰かを彷彿とさせる・・・・・・。
こういう系統の知り合いは一人もいなくていいんだよ、ちくしょう・・・・・・!
「・・・・・・・・・何で、判りました?」
自分で言うのも悲しいけど、どう見たって男にしか見えないと思うんだけど。
今日はママ上のコーディネートで全身黒、しかも皮だからゴツイ系でまとめてるのに。
それなのに見抜かれたし・・・・・・。
「勘」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから、勘」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それだけ?」
「あぁ」
科学的な根拠はないのかよ! 何かそれってかなり空しかったりするんだけど!!
せめて「〜〜〜が女っぽかったから」とか言ってくれたっていいじゃんか! いや、そんなとこないんだけどさ!
どうせ私は勘でしか女に見られねーよ! 悪かったな!!
「別にいいんじゃねぇの? オカマに見られるよりかマシだろ」
「そういう問題じゃないっす」
「タメ語で話せ。ほとんど年も変わらねぇし」
「オッケー」
三上さんはどうやら翼と同じように慇懃無礼なタイプが嫌いなようだ。・・・・・・・・・私が慇懃無礼かは置いておくとして。
「何でオマエそんなカッコしてんだよ。まともにしてりゃそれなりに見えるだろうに」
「それなりって何だよ。つーか私はこれでいいんだって。この容姿でスカートはいてたら変態じゃん」
「まぁ否定はしねぇけどな」
「むしろしてくれ・・・・・・・・・」
疲れたように呟くと三上さんはやっぱりニヤリと笑った。
そんな様子が跡部ほど俺様に見えなかったのはきっと、この人が他人に対して跡部ほど俺様ではないからだろう。
なんとなく、いい人なんだろうなぁと思った。
でもってそれを言ったら「バーカ」って言われた。(でも殴られなかった! やっぱ跡部とは違う!!)



話してみると三上さんは博識で会話も楽しかった。
ちょっと皮肉も言ったりするけど、それもよく似合ってるし。
サッカー部ってことはどっかで翼と繋がってたりして。
まさかそれはないだろ。つーか三上さんと翼が会話してるのって何か恐ろしいし。
この想像は胃が痛くなりそうだから止めておこう・・・・・・。
まぁとにかく三上さんは良い人っぽいことが判った。



「だからちゃんと払いますって」
「うるせー黙ってろ。女に払わせられるかよ」
「気にしなくていいって、そんなの」
食べ終わっていざカフェから出ようとしたところで一悶着発生。
レジのお姉さんが困ったように、でも頬を赤くして私たちを見ている。
三上さん、カッコイイしな。でもって私も(三上さんに一目で見破られたとはいえ)美少年チックだし。
店内の視線もちょっと痛かったりする。
「彼女じゃないんだから私が払うのは当然じゃん」
「誘った俺が払うのが当然だろ」
「いやそれは違うだろ」
「俺の中では常識なんだよ」
そんな常識はどうなんだ、とか思っていたら三上さんはニヤリと笑って仰られた。
「だったら後で体で払ってくれればいいぜ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フットサルなら付き合えるけど」
「天然ぶってんじゃねぇよ。体で払えって言ったら一つに決まってるだろ?」
店内が一気にざわめいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真昼間からその手の発言するんじゃねーよ!
やっぱアンタも跡部と同じ人種だ! いい人なんて思った私がバカだったんだ!!
そんなことを考えてたら何故か頬に他人の手があるし!
ぎゃ――――――――――――――っ! 触るんじゃねーよバカ!!
しかも顔を近づけるな! そして黄色い声をあげるな店内の女性陣!!!
ニヤリと笑う三上さん・・・・・・・アンタ、跡部以上にエロティックだ・・・・・・・・・・・・。
色気が無駄にあってどーすんだよ! 女に使え女に!!
「オマエも一応女だろーが、
「い、いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいや私男だし!」
「今さら嘘ついてんじゃねぇよ」
「嘘じゃないって! この美少年のどこが女に見えるんだよ!?」
「肩甲骨と腰のライン」
「フェチな発言すんな変態っ!」
思いっきり叫んでしまったら三上さんはやっぱりニヤリと笑われて。
それでも私の頬に寄せた手は離そうとしないし!
「アンタはホモか!? こんなカッコイイ美少年チックな女を手篭めにして何が楽しいっ!」
「違ぇよ、バーカ。俺はホモじゃねぇ」
ニヤリとマジで楽しそうに笑って、でもって頬に寄せてた手がいつの間にか腰に回ってるし!
くすぐったいんだってば! 離せいい加減っ!!



「オマエみたいなのは美少年じゃなくて『麗人』って言うんだよ。覚えとけ」



麗人:美しい女性・美人 “美人”の意の漢語的表現



頭で国語辞典を引いているうちに腰を引き寄せられて温かいものが唇を塞いだ。
そのまま、店内が時を止めて約1分。



「・・・・・・・・・んっ・・・・・・」
誰の声だコレは――――――――――――――――――っ!!??



「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜舌まで入れてんじゃねーよ! 変態っ!!」
思いっきり三上(もはや呼び捨て)をどついた私を責められる者はいないと思う。
けれど奴は私の攻撃をひらりとかわしてニヤリと笑いやがった!
「感じてたくせに素直じゃねぇな」
「―――――――――――――っざけんなテメェ!」
「可愛いんだから可愛い言葉遣いしろよ。もったいねぇ」
「余計なお世話だ!」
店員さんには悪いが力いっぱいドアを叩きつけて店を出た。
ふざけんな! 誰が勘定なんて払うもんかよ! ちくしょう! こんなことならもっと高い注文しときゃよかった!!
ケーキくらいで満足してんじゃねーよ、私は!!!





翌日の学校にて。
「だから再放送サスペンスを見れなかったって言うんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・申し訳ありませんでした」
「私、購買のマーブルケーキ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行ってきます」
財布を片手に廊下をひた走りながら思った。
あいつが悪い! 全部全部全部全部全部っ!
全部っ三上亮のせいだ!!
ちくしょう! 今度会ったときは高級フランス料理のフルコースを奢らせてやる!!
首を洗って待ってろよっ!



購買で最後のマーブルケーキを菊丸先輩が買っていて、それを友人にあげたいと言ったら快く譲ってくれた。
愛って偉大だと思った。





学園天国主人公の友人は、『The ups and downs of life』の主人公です。
2003年3月17日