096:溺れる魚
ガシャンと金網の揺れる音がして
振り返った先には見慣れないブレザーの少年
彼は殴りつけたフェンスを掴んでニッコリと笑った
「・・・・・・ダメじゃん、こんなとこで潰し合いなんかしちゃ。君たち二人は俺が負かすんだからさ」
その手には薄く血管が浮かんでいた
突如現れた乱入者に越前はトスしかけた腕を下ろして振り返った
キュッと口を結んで
「・・・・・・・切原さん」
「の家に行ったらココに行ったって言われてさぁ。迎えに来たわけ」
テニスコートのドアを開けて
「青学なんかに何の用? が青学に来る理由なんてあったっけ?」
並ぶレギュラーたちを視界に収めることもなく
「・・・・・・・・・」
彼は、呼ぶ
「・・・・・・・・・あり・・・ません」
「そ。ならいいや」
ようやく返したの言葉にも興味なさそうに頷いて
「てっきり青学に転入でもするのかと思ったよ。跡部さんとか氷帝を捨ててさ、やっぱり双子は一緒にいたいのかなーってね」
軽い口調で言われた言葉
がきつくラケットを握り締め
切原はうっすらと笑みを浮かべた
「そういうわけだから、は俺がもらってくよ。君はいつだって会えるだろ? 双子なんだから」
向けられた言葉に今まで沈黙していた相手が唇を噛んだ
「・・・・・・・・・何で、あんたにそんなこと言われなくちゃいけないわけ?」
一歩、ネットへと踏み出して
「誰に許可とってを連れて行こうとしてんの? アンタにそんな権利があると思ってんの?」
白い帽子のつばの下から鋭い目で睨んで
「のこと物扱いして、アンタ一体何様? 勝手に俺たちの間に入ってこないでよ」
放たれた言葉に切原は笑みを浮かべた
それはもう楽しそうに
――――――残忍に
「リョーマ!」
制する声にビクリと身を強張らせ
切原は少しだけ振り向いて
きつく、拳を握り締めて
「・・・・・・『俺たち』なんて言わないでくれない? 俺はオマエと一括りにされる覚えはない」
出来るだけ冷たい声で言い捨てて
「俺が誰とどうしようがリョーマには関係ないだろ。余計な口を挟むな」
黒の帽子を被りなおして
ラケットをその場に置いて
「・・・・・・行きましょう、切原さん」
「・・・オッケー」
足早にテニスコートから出て行くの後を追って
縫い付けられるように立ち竦むリョーマに笑みを送って
切原は笑う
何て惨めなんだろうね、君たち双子は
声にはならない言葉は誰にも伝わらず
切原はもう一度だけ笑った
2002年12月11日