080:ベルリンの壁





「誰が一番好みかって?」
首を傾げて聞き返したら、有希と麻衣子は一様に首を縦に振った。
・・・・・・赤べこみたい。



何だっけ。たしか最初はカボチャパイの話をしていたような。
それがエンゼルケーキの話になってナイフがカエルで羽ペンがクイディッチで・・・・・・。
あぁそうか、有希が小島明希人先生みたいな人が理想だって言うからそんな話になったんだ。
よしよし、やっと判ったぞ。
が独身主義者なのは知ってるけど、そでもいいなって思う相手くらいいるでしょ?」
「いや、特にいないし」
「いない? ・・・・・・、あなた初恋はいくつの時でしたの?」
初恋初恋・・・・・・アンネ・フランクじゃあなくって。
「判らない。男の親友ならいたけどそれって恋じゃないんでしょ?」
たしか少し前に多紀が言っていたような。友情と愛情は違うんだよーって。
「じゃあって初恋もまだなの!?」
「うん、そうかも」
事実だろうから頷いたら有希も麻衣子も呆気に取られて口を開いて。・・・・・・美少女さん、そんな顔をしないでよぅ。
しかしどうやら二人は真剣な顔になってヒソヒソと話し出した。
あ、明日提出のレポート、高山君に返してもらわないと。有希と一緒にグリフィンドール寮まで行こうかな。
それにしても二人とも、密談は終わったの?
「じゃあ。まず始めに水野のことはどう思う?」
「水野ってグリフィンドールの?」
「そうよ。アイツも顔はまぁまぁだし成績も運動神経もいいし、どう? お買い得だと思わない?」
・・・・・・ここに不動産やさんがおる。
「うん、いいんじゃない? 紅茶好きだし」
「その判断基準はどこから来るのよ!」
思いついたことを素直に言ったら有希にチョップを喰らった。・・・・・・・・・痛いー。
「じゃあ渋沢さんはどうですの? あの方も成績、運動神経ともにいいですし、何より年上だから頼れますわ」
「渋沢さんは却下。あの人と恋愛をするくらいならどこぞの黒犬と同棲でもした方が何十倍もマシ」
だって渋沢さんと付き合ったりしたら体が一つじゃ足りないって、絶対。しかも神経すり減らして寿命が縮まりそうだし。
私は長寿をしたいわけじゃないけど自ら緩やかに死ぬのを選ぶほど気が長いほうじゃないんで。
「なら佐藤は? 結構気も合ってるみたいじゃない」
「佐藤さんは楽しい人だよね。人への気の使い方も心得てるし、行動も突飛だけど理に適ってて要領いいし」
ただ自分を隠そうとしてるというか、弱いところは見せたがらないところが返って気になるかも。
そういうの暴きたいわけじゃないし、あんまり近づきすぎたら向こうが嫌がるかもだし。大人しくしてよーっと。
「藤代君は? 彼の明るいところとか、真剣な顔とのギャップとかいいんじゃありませんの?」
「藤代君は犬に見える」
アニメーガスでもないのに犬に見えるとは何故だコラ。
「じゃあスリザリンの監督生、須釜寿樹」
「渋沢さんと同じ理由で却下」
「笠井君や設楽君は?」
「監督生予備軍なので却下」
中々に好ましいタイプではあるけれど、今はまだそんなでもないし。
「じゃあ郭英士!」
「郭君と付き合うとなると私がサドになりそうなんで却下」
「だから何よその理由は!」
やはりチョップを喰らった。
何だよー。だって郭君って私にいじめられるのが好きじゃん。だったら役割的に私がいじめる方でしょ?だったらサド。サド決定。
「・・・・・・若菜君や真田君は?」
「結人はよく食べよく眠るよね。どっちかっていうと子供みたい。真田君は可愛いからオッケー」
「じゃあ同じ理由で椎名さんと風祭もオッケーなの?」
「うんオッケーオッケー」
本人に聞かれたらめっちゃ怒られそうなことを言ってみた。でも事実だし。
「だから有希と麻衣子も全然オッケーだよ?」
ニッコリと笑って言ったらハイソウデスカと流されてしまった。・・・・・・結構本気で言ったのに。ちぇっ。
「えーっと後は・・・・・・吉田さんとか天城とか高山とか小岩とか?」
とりあえずグリフィンドールで攻めてきたね、有希。でも不破がいないのは何でなのさ。
「みんなイイ人だよね」
「いい人止まりなら恋は出来ませんわ。なら間宮君・鳴海君・桜庭君・上原君・谷口さん・内藤さんはどうですの?」
うひゃあ。意外とハッキリ言ったね、麻衣子。そしてハッフルパフで攻めてくる攻めてくる。
三上さんがいないのが気になるけど、でも答えは一緒。
「みんなイイ人だよね」
「スリザリンの山口圭介・横山平馬・城光与志忠・功刀一!」
「みんなイイ人だよね」
ゆんゆんがいないのが気になるけど、だからそれは以下略。
同じ台詞を三回も言ったらさすがに二人は疲れたようにため息をついて。
ここは先手を打っておこう。
「ちなみにレイブンクローのみんなもイイ人だから」
これで恋愛対象になりえる相手はいなくなっちゃったねぇ。さてはてふむー?
「じゃあ何・・・・・・? は一生恋もしないで生きてくつもりなの?」
「うん、たぶんそう」
「それは人生の半分を損してますわ! 恋くらいしないと女は磨かれませんのよ!」
「いや、磨かなくていいし」
「たしかには天然で可愛いけど、今よりもっと綺麗になりたいでしょ!? だったら恋愛が一番!」
「だから別に綺麗にならなくてもいいし」
私のブレーキも利かずに話はどんどん進んでいく。ちょっと待って、暴走車さん。ガードレールを飛び越えないで。
「この際だから先生とかはどう!? 雨宮先生とか周防先生とか!」
「でしたら風祭君のお兄さんはどうですの? マグルですけれど十分素敵な方だと思いますわ!」
「もうならうちのお兄ちゃんでも譲っちゃう! 大人の恋愛を教えてもらいなさい!」
「そうですわ! そうしましょう!」
おいおいおいおい。何だか判らん間に話が暴走して火星まで行ってるんですけれど?
有希と麻衣子は楽しそうに私の恋愛相手を選んでるし。
いやちょっと待って。恋愛というのは片方あるいは両方が相手を好きにならないと成り立たないものだと思うんだけど。
ならいくらでも落とせるわよ! あとは好きになるだけ!」
「キープしてから好きになればいいんですわ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう何も言うまい。



どこか著しくイッちゃってる有希と麻衣子を遠くに感じながら紅茶を一口飲んでみた。
恋愛なんて程遠いんです。男の子なんていりません。
あ、でも家事をしてくれる主夫なら欲しいかも。それか人生上の合理的パートナー。
それならやっぱり不本意ながらにも監督生四人が一番なんだよねぇ。便利というか何と言うか色々な意味で。
しかしこの人たちは私の身を引き換えに召喚できるモンスターなのであって。
やはりここは穏やかな平和を望む村人でいよう。中ボスキャラも避けて通ろう。
ならば多紀・柾輝・光宏に佐藤さん? 天城や風祭君に三上さんも割りとオッケー。
スリザリンなら山口さんと横山さん・城光さんだね。この人たちなら安全だし。
・・・・・・・・・あれ?何だ、意外といるんじゃん。
そうかそうか、こんな感じで判断していけばいいんだな。あとは好きになるだけ、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
それが一番難しいんじゃん。
誰か教えてくれないかなー。不破とか定義とか判らないかなぁ。どっかに参考書とか売ってないかな。
そうしたらきっと恋愛も出来るのに。
何かすっごい無理な気がする。



とにかくこのどうしようもない有希と麻衣子、どうすればいいのか。
それが恋愛よりも先に考えることみたいだけどね。





2003年1月4日