078:鬼ごっこ





前方オッケー。後ろも気配ナシ。
近くに敵はいない模様。つーか味方もいないけどな!
杖を構えて走り出す。出来るだけ足音は立てないように。
あぁ、これで私も未来の監督生の仲間入りだよ・・・。忍者になるよりは正義の味方になりたかったのになぁ。
これも全てはあのダンブルドア校長の所為だ。
校長が中学三年生のクラスメイトが殺しあう映画を見たものだから、私たちが今こんな目に遭ってんだよ!
泣くくらいなら見んな! そして感動すんな!
魔法の使用だけで実際に殺し合いはしないけどさ。つーかしたらマズイって。
でも必要とあればやるけどねー。うふふふふ。須釜さん&渋沢さんとの対決が楽しそう☆
無事に生きて帰れるといいけどねぇ。ちょっと無理っぽいかも。



・・・・・・・・・そんなことを考えていたらいきなりピンチになってしまった。あぁどうしよう。
今、私の目の前にいるのは三上さん。ハッフルパフの三上さん。タレ目で色男な三上さん。
ちっ! あんなところに抜け道があったのか。さすが先輩、学校の仕組みをよくご存知でいらっしゃること。
絵画の裏から突如現れた三上さんによって私の杖は取り去られてしまい、今は何も持っていない状態。
・・・・・・・・・これは幾らなんでもマズイでしょ。
三上さんは通称デビルスマイルでニヤリとお笑いになられた。
「これでオマエも終わりだな、
・・・・・・・・・マジでバトロワみたいな台詞なんですけど。ひょっとして三上さんも乗るタイプ? どちらかと言うと頭脳戦派?
じゃあ私の敵だ。
でもそれが通用するのも私が武器を持っているときのみで。
・・・・・・・・・ゴメンなさい、翼さん。上位入賞者の寮に入る得点は諦めて下さい。
つーか、相手が悪かったよね。
私は着ていたローブを脱いで床へと落とした。
「どうぞ、三上さん。貴方の手で私の命を絶って下さい」
命=配布されたワッペン。今回のために作られたらしい特別製。・・・・・・・・・暇なんだね、校長。今度一緒にお茶でも飲もうか。
このワッペンを相手に取られるとその人は失格。バトロワ風に言うと死亡って感じ?
死亡者は全員大広間に集合なんだよね。始まって5時間が経ったけど誰が死んじゃったんだろう。
さっきの放送では有希と真田君が呼ばれてたなぁ。
私たちレイブンクローのメンバーもほとんどが脱落しちゃったし。
つーか残ってる人の方が少ないでしょ。しかも曲者な人たちだけ残っちゃって。
潰しあいとかしてくれればよかったのにー。
杖を私に向けたまま近づいてきた三上さん。
ちなみにその手には三上さん自身の杖と、私のものと合計二本。
―――――――――――ごめんねぇ、三上さん。



「っ!」
思い切り三上さんを蹴り上げた。
コートを取ろうとしゃがみ込みかけていた三上さんは仰向けに転がって。
間髪いれずに乗り上げてから杖を奪うと後ろに向けて大声で叫んだ。
「エクスペリアームズ、武器よ去れ!」
次の瞬間、ヒュンッという音と共に私の手には杖が二本収納されて。
下で暴れる三上さんの首を片手で絞めながら首だけで後ろを振り向いた。
曲がり角にいる二人。一人はオロオロと慌てていて、もう一人は諦めたようにため息をついていた。
あれは藤代君と笠井君か。この三人のハッフルパフ生はひょっとして私を潰すことを任務とされてたのかしら?
だとしたらゴメンねぇ。渋沢さんに怒られて下さいな。
ニッコリと二人に笑ってみせて。
「ペトリフィカストタルス、石になれ!」
カッチーン
二人ともちゃんと固まって。呪文学とかちゃんとやっておいてよかったなぁ。
私に潰されている三上さんは石化した二人を見て抵抗を諦めたのか、もがいていた手をグッタリと落とした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あ、ゴメン。私が首を絞めていたのが悪かったのか。
「三上さん、三上さん。生きてますか?」
ペチペチと真っ白な三上さんの頬を叩く。
つーか死なないで。死んだら殺した人は失格になっちゃうんだって。むしろ失格以前の問題だけどさ。
―――――――――――殺したくないんだよ。
「・・・・・・・おまっ・・・マジで殺す気か・・・!」
「まさか、全然そんなつもりありませんよ。ちょっと抵抗を抑えようとしただけで」
むせ返る三上さん。でも私はまだ彼の上に乗ったまま。
・・・・・・・・・・騎乗位、とかバカな考えが浮かんじゃったけど、それはまぁ置いておくとして。
「ハッフルパフ生はこれで残り渋沢さんだけになっちゃいましたね」
「・・・・・・あいつなら一人でもやってけるだろ」
「私もそう思います」
むしろ仲間でも平気で裏切りそうなんで、一人の方が良いのではないのかとさえ思うんですけど。
「相手が悪かったですねぇ、三上さん」
「・・・ちっ」
「魔法使いも魔法だけじゃダメってことですね。時代の移り変わりと共にニーズも変わっていくようで」
「・・・もういいからさっさとしろよ」
「はい。言い残すことはありますか?」
遺言は一応聞いておきましょう。伝える相手が渋沢さんだったらまず間違いなく伝えないけどさ。
「渋沢には気をつけろ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
渋沢さん、貴方きっといい死に方しないですよ。同じ寮生にまでこんなこと言われちゃって。
「ご忠告痛み入ります」
「アイツは汚い手でも平気で使うからな。出来るだけ背中は見せるな」
「はい」
「気を抜いたら負ける。いつでも潰せるように構えとけ」
「・・・・・・はい」
それだけ言い切ると三上さんは満足したように瞼を下ろして。
・・・・・・・・・ごめんなさい、三上さん。
私は彼のローブからワッペンをそっと取り去った。



これで残りは私、渋沢さん、翼さん、須釜さん、佐藤さん、風祭君、李さん、光宏の計8人。
つーかどうしてこう一癖ある人ばかりが残るかねぇ。
もっとサクサク減っていきなよ。そして楽をさせてくれ!私に!
・・・・・・あ。
むしろ自らリタイヤしようかな。リタイヤしたいな。しちゃだめかな。
だってもうお昼の時間はとうに過ぎたし、おやつの時間は目の前だし。
お腹減ったよー。サンドイッチが食べたいよー。木田さんの入れてくれたコーヒーが飲みたいよー。
でも自分から死んだりすると私が殺した人に恨まれそう。
郭君とか、功刀さんとか、設楽君とか、山口さんとか、他にもエトセトラエトセトラ。
・・・・・・・・・今気づいたけど、実は私殺しすぎ? 映画でいうならマシンガンぶっ放つ大量殺人者?
えーそんなのいやー。守ってもらうヒロインよりかは幾らかマシだけどさ。
自分の身は自分で守れってね。



教室の中にある気配を悟って私は杖を構え直した。
感じからしておそらくスリザリン。李さんか・・・・・・あるいは須釜さんか。
どっちでもいい。つーかどっちでも変わらんし。
――――――――――一発で仕留めてやる。
覚えている呪文を心の中で唱えながら扉へと手をかけた。
必ず、生き残ってやる。



勝負はまだ終わらない。





2002年12月12日