075:ひとでなしの恋





恋愛というのは全くもってよく判らない。
不破流に言うのなら「理解不能」だ。
だって「好き」だなんて言葉は日常でも良く用いられすぎて、何を基準にすればよいのかもうサッパリ。



「じゃあちゃんはこのサーモンのサンドイッチは好き?」
多紀がいつもの笑顔で笑いながら聞くから一つ頷く。
「でもそれって『彼が好き』っていうのとはまた違うでしょ?」
人とサンドイッチを同列に並べるのはどうかと。
むしろサンドイッチの方が上で。あーでも具にもよるか。個人的に卵は煎り玉子の方が好き。
「え、何々? 、誰か好きな奴が出来たの!?」
正面の席でサラダを避けてグラタンを食べていた光宏が声を上げる。
・・・・・・っていうか、声大きいし。
勢いよく人が振り向いたよ。
同じテーブルの翼さんや木田さんはともかく。
グリフィンドールでは佐藤さんと有希を筆頭に全員振り返ったし、ハッフルパフでも渋沢さんや藤代君、桜庭君に上原君とざくざく振り返ったし。
それに後ろからの視線が痛いんですけど。・・・スリザリンの皆さんも、どうやらこっちを向いたご様子。
「いや、別に好きな人が出来たわけじゃないんだけど。ただ気になっただけで」
ちゃんと否定はしておかないとね。
そうしたら光宏は何だーと言いながらつまらなさそうにサラダの皿をより遠くに押し退けた。そんなに嫌いか、野菜が。
うーん、だから。
「――――――柾輝が好き」
そう言ったら隣で紅茶を飲んでいた柾輝がブハッて吹き出したんですけど。とりあえず布巾を渡してあげよう。
あ、真っ赤になってる。ちょっと可愛い。
つーか後ろの視線が怖い。この人を呪い殺すような視線は誰だ?須釜さんか?それとも郭&李の従兄弟コンビか?
「─────っていう『友達が好き』っていうのとは、また違うわけじゃない? 特別なんでしょ? 『恋人が好き』っていうの」
そこのところの定義がイマイチよく判らないんですけど。
友達への好意が拡大されたらそうなるわけ? そうしたらこの世の中は同性のカップルがいっぱいになると思うんだけど。
そう言ったら多紀がクスクスと笑いやがった。正面の光宏も楽しそうに笑うし。
こぼした紅茶を拭き取った柾輝は私の頭を一つ小突くと、プリンを差し出してくれた。(もちろんスプーンも一緒に)
「これから学んでいけばいいんだよ。いつか必ず出会えるから」
「運命の人に?」
「そう、運命の人に」
多紀が自信満々で頷いた。こういうときの多紀の笑顔は魔力があると思う。
が結婚出来なかったら俺がもらってやるから心配すんなって」
「え、マジで? 光宏のお嫁さんかぁ」
ちゃんなら僕も欲しいなぁ」
「本当? 多紀のお嫁さんもいいかもねー」
ほのぼのな家庭が築けそうで、それもまたヨシ。
しかしそんなことを考えていたらストップがかかった。
「ちょお待てや! 何自分ら抜け駆けしとんねん!!」
「そうですよ〜。さんの旦那様は僕なんですから〜」
さん。俺は料理上手だからお買得だと思うんだが、どうかな?」
「つーか何おまえら人の寮生を口説いてんだよ! 他寮の奴が勝手なことしないでくれない!?」
・・・・・・御大登場で会場は大混乱。
っていうかさ、結婚以前に私は独身主義者なんだって。
もし結婚するとしても家事が万能に出来て私が働くのを支えてくれるような主夫がいいんですけど。
小声で呟いてみたけど誰も聞いてはいないみたいだった。
あーこのプリン美味しい、大好き。



自分が誰かを好きになることなんて有り得ないと思う。
だって私にはもう特別な人がいるんだから。
先生以上に特別な人なんて、出来ないんじゃないかな。



だからきっと、私は恋愛はしないだろう。
そう思った。





2002年12月6日