069:片足





「―――――――――――化け物っ!」



叫ばれた言葉に、俺は薄く笑った



「『化け物』・・・か。またあだ名が一つ増えちゃいましたね」
ついさっきまで走り回っていたテニスコートを後にしながら、俺は小さく笑う
「あんまり可愛くないね、『化け物』って」
「俺は『鬼』っていうのが気に入った」
「そう? 俺は『Murderer』かな。横文字が似合うよ、には」
「・・・・・・・・・『プレーヤーキラー』っていうのもあります」
鳳さんと、日吉さんと、樺地さんが笑う
みんなの楽しそうな声が嬉しくて、俺も笑う
肩にかけたテニスバッグはとても軽い



さっきの試合
青学の、たぶん桃城っていう人との試合
あれはわりと楽しかった
勝ったからこそ、楽しかったのかもしれないけれど
ジャックナイフやダンクスマッシュ?
パワープレイヤーとの対戦は面白い
俺とは、逆のタイプだから
やりがいがある



勝ち甲斐がある



「これで、青学は残り二人になりましたね」
リョーマと、あと誰かもう一人
「俺は次、あのチビと対戦だ」
「頑張って下さいね、日吉さん」
心から応援する
だからか判らないけど、軽く頭を撫でられた
「頑張って下さい」
本当に、心から



日吉さんとリョーマがあたって
たとえば日吉さんが勝ったとする
そうすると、俺は嬉しい
自分の大切な仲間が勝ったのだから
俺は嬉しい



日吉さんとリョーマがあたって
たとえばリョーマが勝ったとする
そうすると、俺は悲しい
自分の大切な仲間が負けたのだから
俺は悲しい



でもいいけどね
その次は、俺だから



負かせてあげるよ、リョーマ



必ず



「あっちで跡部先輩たちが待ってるよ。一緒にお昼食べようって」
鳳さんが柔らかく笑う
好きだな、この笑顔
「・・・・・・荷物、持ちます」
樺地さんがそっとテニスバッグを持ってくれる
好きだな、この優しさ
「行くぞ、
日吉さんが前を向いて言う
好きだな、この強さ



向こうで手を振ってくれている向日さんも
仕方なさそうに苦笑している宍戸さんも
受け止めてくれるような雰囲気を持つ忍足さんも
柔らかく包み込んでくれる芥川さんも



いつも俺のことを見ていてくれる、跡部さんも



みんなみんな好き



―――――――――――――――本当に、すき



だから許さないよ、リョーマ
俺の大切な仲間を傷つける行為は
絶対に、許さない



俺と試合したいなら
早く早くあがっておいで?
そのときは全力で潰してあげる



俺の一番気に入っているあだ名をもってして
おまえを潰してあげるから



化け物

Murderer
プレーヤーキラー



あと他にもいくつかあったはずだけど
覚えてない
試合するたびに増えるから
でも、その中でも俺が一番気に入っているのは



Death―――――死神―――――



このあだ名をもってして
おまえのテニス生命を終わらせてあげるよ





2003年3月3日