056:踏切
カンカンカンという音と共に黄色と黒の遮断機が下ろされて。
「あちゃ、間に合わんかったか」
金色の髪をなびかせた少年が頬をかいて困ったように言う。
「ええよ、兄貴。今日は和尚さんもちょお遅うなる言うてたし、今からなら十分夕飯に間に合うやろ」
隣に立つセピア色の髪をした少年は、自分よりも20センチ以上背の高い相手を見上げて少し笑う。
その様子に金色の少年もくしゃりと笑みを浮かべて。
「せやな。何も急いで帰らんでも夕飯はちゃんと取っといてくれるやろうし」
「今日はブリと大根の粗煮やって言うてたで。あと新米もろうたからそれでご飯て」
「うわ、ホンマ? 余計早よう帰りたくなってきたわ」
二人して笑いながら電車が来るのを待って。
遠くから線路を通じて大地が揺れる。
迫り来る、シルバーメタリックの車体。
夕焼けの紅い空を眺めて。
隣の、小柄な弟を見つめて。
───────────電車が来る。
「・・・・・・・・・・・・・自分が行きたい言うなら、どこ行ってもええんやで? 俺はいつでもの味方なんやからな」
カンカンカンという音を立てて下がっていた遮断機が上へと上がる。
ざわざわと人と車が行き交って。
二人の少年も足を踏み出す。
「兄貴、さっき何か言うた?」
セピア色の少年が夕日に紅い顔で見上げるから、金髪の少年はとても優しく微笑んで。
「・・・何でもあらへん。さ、はよ帰るで」
そっと手を差し出して、柔らかく繋ぎ合った。
伝わる体温が心地好くて。
泣きそうになっている自分が、いた。
2002年12月6日