051:携帯電話





夜に電話をかける相手は友達というのが相場です。



「もしもし。?」
『イエッス。あなたのメル友・さんですよ〜』
「久しぶりだな。元気か?」
『もちろん元気。裕太はどうよ? テニス順調?』
「ああ、まぁまぁかな」
『そりゃよかった。・・・・・・・・・って違うんだYo! 今日電話したのは日常会話をするためなんじゃなくって!!』
「?」
『裕太さ、兄貴いない!? 青学の三年で不二周助っつーの!』
「・・・・・・・・・いる、けど」
『やっぱり!? 同じ名前だからそうなのかと思ってさー! つーかあの人スゴイね! 私、感動したよ!!』
「・・・・・・・・・」
『華奢でさ、髪もサラサラで線も細くて、すっごい美人さんじゃん!』
「・・・・・・・・・・・・美人?」(何となく雲行きが怪しくなってきたな、と思って眉をひそめる)
『そうだよ!体 重も軽いしさ、あれでマジで男なわけ!? 信じられないんだけど!』
「体重って・・・・・・、一体何やったんだ?」
『何って別にお姫様抱っこしただけだよ』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、お姫様抱っこ・・・?」
『イエス。少女たちが一度は憧れるという王子様の抱き上げ方さ。今度裕太もやってあげようか?』
「いや遠慮する」
『うっわ即答!』
「つーか、兄貴にお姫様抱っこ・・・・・・・・・・、相変わらずチャレンジャーだな・・・」
『今回はしょうがなかったんだって。階段からお姫様が落ちてきてさー、抱きとめたのはいいんだけど御足に掠り傷が出来ちゃって。僭越ながら保健室まで運んで差し上げたわけなのです』
「傷って・・・!? 大丈夫なのか!?」
『2・3日もすれば部活も出来るって保険医のオバちゃんが言ってたよ。ノープロブレム!』
「そっか・・・よかった・・・」
『でさ、初めて見たんだけど本当に綺麗な人だね。急に雰囲気が変わって周囲を北極に変えたりもするけどさ』
「・・・・・・・・・」(何てコメントしていいのか迷っている)
『美人学生とお姫様と魔王を同時にこなすなんて裕太の兄貴ってスゴイよなー』
「・・・・・・・・・」(何かが違う気がする)
『助けたお礼にラズベリーパイまで貰っちゃって』
「あ、それはたぶん姉貴が作ったんだと思う」
『何? 裕太の家って兄と弟だけじゃなくてお姉様までいんの!? うっわズルッ! 一人くらい分けてよ』
「何バカなこと言って・・・・・・」
『裕太とお姫様はあんまり似てなかったけどさ、お姉様はどっちに似てんの?』
「姉貴はたぶん俺と似てると思う。親戚とかにもよく言われるし」
『マジで!? うわー裕太の女版かぁ。今度会わせてよ』
「女版って・・・気持ち悪いこと言うなよ。姉貴もになら会いたがると思うぜ? 姉貴、美少年好きだし」
『ヨッシャ! これぞまさにジャニーズ系に生まれてきたことに対する喜びさね!』
「しばらくは大会の練習で帰れなさそうだから、またメールするな」
『オッケー☆ 精々青春の汗でも流して下さいな』
ももうすぐコンクールなんじゃないのか? 試合と重ならなければ聞きに行くんだけど」
『あらそんな! 花束と差し入れなら地区予選じゃなくて本選のときに持ってきてくれた方が嬉しいなぁ。ありがと裕太! よっ男前!』
「・・・・・・・・・んなこと言ってると漬物持ってくぞ」
『うぎゃ! ヒドイ裕太! 人の嫌いなものをわざわざ用意するだなんて・・・!』
「バーカ」
『裕太こそバーカ』
「じゃ、またな。部活頑張れよ」
『裕太もね。暇になったら試合も応援に行ってあげるから。裕太の大好きなキムチを持ってね!』
てめぇ・・・・・・」
『目には目を歯には歯を! 右の頬を叩かれたら左の頬を差し出すのだ! BYハムラビ法典』
「めちゃくちゃだろ! それ!」
『裕太が先にやったんじゃんかー』
「・・・・・・・・・悪かったよ」
『うぃ。ではまた、ルドルフの皆様にもどうぞよろしく』
も。・・・・・・・・・・・・・・・・・・兄貴には、気をつけろな」
『夏場はクーラー代わりになっていいけど、冬は近づきたくないよね。大丈夫! お姫様モードならともかく魔王になったらソッコーで逃げるから!』
「そうだな、俺もそうした方がいいと思う」
『ピーチ姫とクッパが同一人物だなんてゲームとしては大穴だよね』
「じゃあがマリオで」
『裕太がルイージ』
「じゃ、またな」
『裕太さっきもソレ言ったー。もっと感動する別れの台詞で締めくくったりはしてくれないの?』
「誰が言うかっ」
『それではさようなら、愛しい人。また会える日まで』
「・・・・・・・・・じゃな」
『バイバーイ』



長話も夜のひと時には丁度よくて。
いつもはメールで済ます関係も、電話越しだとちょっとだけハイテンションに様変わりして。
「そういえばアイツ・・・・・・テニスの話しなかったな・・・」
小さく笑みを漏らしてメールを一通打ってみた。
大切な友達へと。



友達とする交流はこれだから止められないのです。





2002年11月23日