050:葡萄の葉





「暇やなーリョーマ」
「そうだね、ヒマ」
「せやけど部長さんからかって遊ぶ気分ちゃうし」
「大石副部長から胃薬もらってる姿見ちゃうと遊ぶ気失せるし。部長は少しそっとしとく?」
「せやな。ほな今日は大人しゅうしとくか」
「そうだね」



ちびっ子は大人しく遊び始めた。



「・・・・・・だけどさ、あの部長の眉間のシワはもう取れないと思うんだけど」
「どっちにしてもあの表情が硬いのはあかんって。せっかく美形なんやし笑えばえぇのに」
「人間じゃないんじゃないの? ロボットとか」
「顔だけ見ればそうかもしれへんな。せやけど不二先輩かてあんま表情変わらへんよ?」
「・・・・・・・よく、いつも笑顔でいられるよね。感情線イカれてるんじゃないの?」
「能面とちゃうから普通やろ。せやけどリョーマ、その言い方はヒドイで。心が広いとか言うてや」
「やだよ、そんなの。こそ能面ってヒドイんじゃない? 不二先輩が聞いたら怒るよ」
「よく言うわ、自分かて言いたい放題のくせして。不二先輩の顔、俺は好きやで? 綺麗やし」
「秀麗ってあぁいう人のこと言うんだっけ?」
「けったいな言い方やな。美人っちゅうのが普通やろ」
「ろくに日本語知らないし、俺。こそ生まれも育ちも日本なんだから俺にレクチャーしてくれてもいいんじゃない?」
「いややわ、そんなん。国語って苦手やし、それこそ不二先輩の得意教科って古文やろ? ほな不二先輩に頼めや」
「やだ。はテストじゃ学年トップなんだから教えてくれたっていいじゃん。それとも何?俺が嫌いなんだ?」
「誰もそうとは言うてへんやろ。俺とリョーマじゃ勉強にならへんって言うとんのや」
「やっぱゲームとかテニスとかしちゃうし? それにうちじゃ親父も邪魔してくるしね。・・・あのクソ親父」
「自分の父親をそんな風に言うたらあかんって」
「テニスだけならまぁまぁなんだけどね」
「根が素直やないなぁ。正直に『パパ大好き!』って言うたらええのに」
「・・・・・・入院したい?」
「いい病院紹介してくれるん? 普通病棟と精神病棟とどっち?」
「ちゃんと檻のついてる方に入れてあげるよ。心配しなくても」
「もちろんリョーマも一緒やろ?」
「ろくなこと言わないね、本当。俺が入るわけないし」
「仕方ないやん。俺が入るならリョーマも入る。俺らは一心同体のラブラブ夫婦なんやから」
「ラブラブって何。日本人って英語だか何だか判らない変な言葉を作るの好きだよね。つーかバカっぽく見えるから止めれば?」
「バカって・・・! あの日のプロポーズは嘘だったん!? うわー俺傷ついたわ・・・ボロボロや」
「止めなくてもはバカだっけ。忘れてたよゴメンナサイ」
「今のめっちゃ棒読みやったで・・・・・・。俺、南パパと義親子になるって約束したんに・・・。かんにんなぁ、パパ・・・!」
「パンチ!」(パシッ)
「チョップ!」(ビシッ)
「・・・・・・プリン食べたい」
「いきなりやな」
「何でもいい。プリン食べたい」
「今は部活中やろ。プリンってメルシー?それともモロゾフ?」
「普通のコンビニのやつ」
「つまらへんなぁ、それ。まぁ安上がりやけど」
「どれでもいいけどね、食べれれば」
「バラエティーに富んだプリンもあるし。菊丸先輩が調理実習で作ったのなんてカボチャやったな。あれはめっちゃ美味かった」
「たぶんも作れるんじゃないの」
「能力はあるやろうけどな。今度作ってみるわ」
「悪いけど、今度の日曜は無理だから別の日にしてよ」
「用事でもあるん? あ、わかった。デートやろ? 俺を差し置いて他の子とデート!? ヒドイわリョーマ!!」
「間違った認識しないでくれる? ガットの張替えに行くだけだし」
「仕方あらへんな、それじゃ。ほな俺は兄貴相手にプリン作って味見してもらうわ」
「・・・・・・・・・わかった。午後なら空いてるからそれでいいでしょ」
「よし、商談成立やな。忘れるんやないで?」
「出来たらね」
「寝過ごして忘れたら別れたるわ」
「別れるってそもそも付き合ってないし。プリンとだったら付き合ってもいいけど」
「どっち取ってもえぇやん。プリンを取れば俺がついてくるし、俺を取れば美味い料理がついてくるし。お買い得や」
「安くなってる? 平常価格より」
「リョーマの愛情次第なんちゃう?」



「ねぇ、不二・・・・・・・・・」
「・・・・・・何、英二」
「にゃんであの二人あんな緊張感いっぱいなムードで話してんの・・・?」
「・・・・・・さぁ? 乾、知ってる?」
「俺のデータにはないな。越前とはいつもは仲が良いはずだが・・・・・・」
「ど、どうしたのかな・・・・・・?」
「・・・・・・手塚、そろそろ休憩も終わりの時間だ」
「よし。――――――集合!!」



「うぃーす」
「すぐ行きまーす」



先輩方は知らない。
ちびっ子2匹が遊んでいることを。



「ストリングも直してもらおうかな、日曜」
「打ちやすいのにしといた方がえぇで。ショットは正確さが勝負やからな」
「何でも出来るけどね、俺なら」
「ラッキーはそう続かへんよ?」
「よく言ってくれるね、こそそうなんじゃない?」
「言うてくれるやん。俺の実力を知らへんわけやないやろ?」
「ろくに試合してないからね、とは。ここらでハッキリさせとく?どっちが上か」
「堪忍やな、それは。疲れるだけやし」
「試合しようよ」
「よう考えとくわ」



先輩方は知らない。
ちびっ子2匹が遊んでいることを。



――――――『会話しりとり』で遊んでいることを、先輩方は知らないのであった。





2003年2月26日