[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
046:名前
「ジロー」
・・・・・・・遠くから、声が聞こえる。
アキノの声。ちょっと高くて、でもって甘くて、俺の大好きな声。
「ジロー、もう授業終わったぞ」
くしゃりって、俺の髪がかき混ぜられた。
アキノの温かい手の平。これも、好き。
優しく撫でてくれる動作がすごく気持ちいい。
「ジロー」
その声が、すごく、好き。
・・・・・・・・・俺と、アキノは。
一年のときに同じクラスになって。
綺麗で可愛くてカッコよくて何でも出来るアキノはクラスではちょっと浮いてた。
たまたま隣になったときに、かけられた声。
『芥川君、だよね? 俺はクドウアキノ。よろしく』
・・・・・・・・・こんなに綺麗な声、初めて聞いた。
その瞬間から、アキノは俺の『トクベツ』になったんだ。
・・・・・・・・・クラスが離れた二年のときも。
廊下で会えば『ジロー』って呼んでくれるアキノがいて。
そのたびに俺は、笑顔になって。
駆け寄って一緒に話したり、ご飯食べたり、並んでお昼寝したりした。
アキノが傍にいると安心して眠れちゃうから、跡部に怒られたりもしたっけ。
あぁそっか・・・・・・・・・。
跡部、あのときからアキノのこと好きだったんだ。
でもダメ。
アキノは俺の親友なんだから。跡部になんて譲ってあげない。
アキノはずっとずっと俺の『トクベツ』なんだから。
まだまだこの場所は譲ってあげない。
跡部にも、他の誰にも。
「ジロー」
寝てる俺の髪を撫でるアキノ。
うん、俺の名前を呼んでくれるその声。
一番、好き。
だからもっと名前を呼んで?
2002年12月6日