043:遠浅
12月は教師だって走ります。
「22日」
「午前は終業式で午後はジロちゃん(氷帝中3年)とがっくん(氷帝中3年)とボーリング」
少女は手帳を見て答えます。
「23日」
「その日は侑士(氷帝中3年)とデート」
「・・・一日中か?」
「一日中よ。今年の一番最初のクリスマス予約だからね」
「24日」
「その日が誕生日の葵さん(十二支高1年)が10:00〜14:00で、15:00〜19:00が越前(青学中1年)とデート。そのあとは実家で亮とクリスマス」
双子の名前を挙げてニッコリと微笑む少女に、少年は眼鏡を片手で直して。
「25日」
「午前中は24日から引き続き亮とクリスマス。午後からはNYの父の所へ会いに行くの」
「・・・・・・帰国は?」
「30日成田着20:45の便」
少年は一つため息をつきました。
けれど少女は楽しそうに笑います。
「31日は黒須グループのパーティ。社長の親族がその日誕生日らしいし、そのお祝いに。夜からは実家で亮とお正月」
紅白を見て、行く年来る年を見るんだ、と少女は幸せそうに微笑んで。
そう言われては少年も何も言えずに黙るだけ。
「元旦は家族で過ごすつもり。こんなときでもないと一家も揃わないしね」
「2日」
「1日が誕生日だったのを振り替えて、藤代君(武蔵森中2年)と一日デート」
「3日」
「不二(青学中3年)と英二(青学中3年)の誘いで男子テニス部有志と初詣だったと思うけど?」
「・・・ああ、そうだったな」
「手塚も行くんでしょ?」
「そのつもりだ」
満足の行く返答を受けて少女は一つ頷いて。
「4日から6日は親戚が集まるからお相手しなくちゃだし、7日は祖父に連れられて新年パーティのお供だし」
「・・・・・・宿題はいつやるんだ」
「もう始めてるわよ。それに私たち3年は内部進学&外部受験でほとんど無いに等しいじゃない」
「・・・・・・」
「8日はもう始業式だし。この冬休みは予定が一杯ね」
黙りこくってしまった少年を少女はじっと見て、クスリと笑う。
新しくした皮の手帳をペラペラとめくって。
「だから手塚と会うとしたら元旦の午後2時からしかないんだけど、どうする?」
顔を上げた少年にニッコリと笑ってみせて。
その整った美貌に少年が頬を紅くしかけ、けれどこれが少女の素だと思い出して慌てて気分を落ち着ける。
少女はクスクスと笑みを止めずに。
「元旦、初詣でも行く? テニス部でも行くから二度参りになっちゃうけど」
「別にそれくらい構わないだろう。・・・・・・こそ家の方は大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。その日は家族全員、飲み潰れて一日ダウンしてるだろうから」
「・・・・・・」
「未成年の飲酒禁止なんて言わないでよ?お正月くらい羽目を外したっていいじゃないの」
「だが・・・」
「手塚、着物持ってる?」
突然の話題転換は少女の特異性の一つ。
付き合いもそれなりに長くなってきた少年は特に驚かずに。
けれどどこか流されている、なんて思いながら頷いて。
「じゃあそれ着て来て。私も着物着てくからきっと境内の視線二人占めよ」
楽しそうに笑う少女に少年は一瞬眉をひそめて。
けれど少しだけ口元を緩めて微笑んだ。
「・・・・・・正月だしな」
「そうそう、正月なのよ」
二人して一緒に笑いあって。
正月の予定はこれで決まり。
今年一年お世話になりました。
来年もどうぞよろしくお願いします。
堅苦しい挨拶をしながらも二人は楽しそうに笑うのだった。
2002年12月10日