042:メモリーカード
本当に久しぶりに日本へ帰ってきた。
帰ってきたからには実家に顔を出さないわけにはいかず、とりあえず東京駅にて西城はと別れた。
大袈裟に手を振って、明後日にはの家に行くと約束も取り付けて。
西城が実家にあまりいたがらないことを知っているは、穏やかな笑みでそれを受け入れてくれた。
こんなときに西城は思う。
自分はにずいぶんと迷惑をかけてしまっているなぁ、と。
新幹線から見える街並みはあまりの速さで通り過ぎて、動体視力のいい西城としては目が痛くなってくるのも事実。
窓辺に置いた紅茶の缶。食べ終えてしまった駅弁。
仕事柄、長時間の移動には慣れている身体をちょっと伸ばしてみたりして。
まだと別れて二時間も経っていないのに、もう帰りたくなっている自分に西城は小さく笑った。
「クンを知った頃は、あんなに嫌いだと思ったのに全くもって不思議なものだ」
呟いた声が聞こえたのか通路を挟んだ席に座っていた女性が振り返り、西城は極上の笑顔を浮かべてみせた。
整った西城の容姿に真っ赤になる女性を尻目に、目を閉じて昔を思う。
どんなに離れていても常に同じ位置に立っている、親友のことを。
西城にとってという人物は、紛れもなく大切な人だ。
掛け替えのない、と表してもいいくらい。
別に同性愛の趣味があるわけではなく、ただ単に人間として尊敬しているのだ。
の強さを、賢さを、優しさを、そして弱さを。
全てを愛しく思うし、それらから構成されているを素晴らしい人だと思う。
同じ人間として尊敬し、また競争心を持って、それでも尚親友でありたいと思う。
の隣にいることを恥じない人間になりたい。
ずっとそう願って努力してきた。
「・・・・・・・・・思えばこういうのを『運命の人』というのかも知れんな」
自分で呟いた言葉に思わず笑って。
振り向いたさっきの女性にも今度は目もくれずに。
ここ数年、どんなときもが一緒にいた。
数々の苦しみと喜びを共にしてきた。
記憶の中にはいつも彼がいる。
そしてこれからも。
二人きりで初めて日本を発つときに決めたのだ。
西城はと釣り合う人間になるためならどんな努力もする。
は西城と肩を並べて走っていくためなら苦行さえ厭わない。
そしてそれを言葉にせずともお互いをそう思っていることを理解して。
彼らは今日も共にいる。
共にいるために共にいるのだ。
2002年12月7日