040:小指の爪





スガ的恋愛鉄則第5条
『感じたことはちゃんと伝える(相手を不快にさせない範囲で)』



「小島って可愛いよな」
鉄則に従って言ってみた。つーかいつも思ってることなんだけど。
でも何故か目の前の小島は固まって。
周りでボールやらコーンやら片付けていたサッカー部員たちも固まった。
・・・・・・・・・何かやった? 俺。
だんだんと顔を赤くさせていく小島はものすごく可愛くて、だから素直に言ってみる。
「小島、可愛い」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
「いつも思ってるんだけどさ、本当に可愛いって」
あ、向こうで水野や風祭、それに女子部の子達まで顔を真っ赤にしてる。
不破は相変わらずの無表情で、佐藤は腹を抱えて爆笑してるけど。
だから俺は何を?
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜なっ・・・・・・!!」
「な?」
「・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・!」
「?」
「・・・・・・・・・・・・・・・んでも、ない・・・・・・」
小島が真っ赤な顔のままうつむいて、向こうでは佐藤がさらに大笑いして。
俺はただ鉄則に従って感想を述べただけなのに、何で笑われるのかイマイチ判らん。
そんなことを考えているとまだ顔を赤くしている風祭が照れたように頭をかいて。
「・・・すごいね、君って」
「スゴイって何が?」
「えっと・・・・・・だから、その、さっきみたいなことをサラリと言えるのって」
『さっきみたいなこと』っていうのはつまり?
「小島が可愛いってこと?」
そう聞くと風祭はコクコクとうなずいて、小島はさらにうつむいた。
「だって本当のことだし、言うのは当然だろ?」
「・・・・・・えっと・・・」
そこで何故困る、風祭。
「なぁなぁ、具体的に小島のどこが可愛いのか教えてくれへん?」
風祭の頭の上から佐藤が現れた。オイオイ、風祭が潰れてるぞー。
「具体的に?」
「せや、具体的に」
目がキラキラしている佐藤と、再び顔を赤くした風祭。それに片づけを止めてこっちを見ているサッカー部員たち。
極めつけは俺の隣でいまだにうつむいている小島。
黒髪の間から見える耳が真っ赤に染まっていて。
――――――うん、可愛いと思う。
理由ならいっぱいある。
だけどさ。



「教えない。これで誰かが小島のこと好きになったりしたら困るし」



「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」



だから何で固まるんだって。
今度は佐藤までもが目を丸くしてるし。あ、でも不破はいつも通りみたいだけど。
「小島、帰り支度終わった?」
「・・・・・・・・・」
コクリとうなずいた小島はまだうつむいたままで。
「じゃあまた明日な」
サッカー部員たちに手を振って、俺と小島は歩き出す。
当然のように、その手を握って。
スガ的恋愛鉄則第5条、とりあえず実行してみました。



「あははははははははは! あれじゃ小島も苦労するで!」
「本当にすごいですよね、君。照れもしないであんなこと言えるなんて」
「チッチッチ、甘いでポチ。女っちゅうのはあぁいう言葉を言って欲しいと思うとるもんなんや」
「小島さんもですか?」
「せや。恋する乙女は夢見がちやからな。タツボンにはできへんやろ、アレは」
「・・・・・・・・・シゲ」
「なんやタツボン、ホンマのことやろ?」
「不破君なんかは得意そうですよね。素直に気持ちを表すのって」
「それは止めときや。アイツは良いことだけじゃなく悪いことまで素直に言うてまうし、それはあかんやろ」
「正直に言うことの何が悪いのだ?」
「時と場合と相手によるっちゅうことや」



「まぁでも小島さんが嬉しそうだったから、君ってやっぱりすごい人なんですね」



サッカー部でそんな会話が交わされているとは露知らず。
俺はいつもより大人しい小島と仲良く家路に就くのであった。





2003年1月18日