039:オムライス





俺の親友・真田一馬。
ヤツの本当の姿は主婦なのだ! (それも新妻じゃなくって結婚して10年目くらいの!)



今日は選抜の練習日で、昼休みになった俺たちは木陰で弁当を広げている。
あ、もちろん俺たちっていうのは俺・一馬・英士のこと。これはもう当然って感じ?
俺の今日の弁当は和風の五目御飯。ごぼうの肉巻きほうれん草のおひたし。
あぁ美味い。やっぱ弁当は手作りに限るよな〜。これで母さんじゃなくて彼女とかが作ってくれんなら最高なんだけど。
英士は今日は両親が出張でいないらしくコンビニ弁当。
おにぎりが梅と和風ツナマヨネーズ。それにサラダとヨーグルト。
ヨーグルトはチチヤスじゃないし。ちぇっ。チチヤスだったら容赦なく奪うのに。
おにぎりも新作のマグロ味噌とか試してみろってーの。
ったく、本当に安全圏を生きるヤツだよな、英士って。
そして問題は一馬だ。
ヤツの今日の弁当は―――・・・・・・。



「チキンライスのオムライス。具はニンジンとグリンピースとコーンと鶏肉。パセリと・・・何だ、ソレ?コロッケか?」
「鮭のクリームコロッケ。昨日夕飯に作ったからさ」
「ほほう。コロッケと野菜の甘酢あんかけ。げっ! おまえトマトなんて入れてくんなよ!」
「好き嫌いするなよ、結人」
「ハイハイ。で。デザートは?」
「りんご」
「うさぎ?」
「うさぎ」



「―――――――――――ヨシッ! 合格!!」
なんて俺好みの弁当を作るヤツなんだ、おまえは!



「というわけでコロッケもらいっ!」
箸を突き立てるとサクッという音がして。そうそう、こうこなくっちゃな!
「・・・・・・あ、美味い」
鮭とクリームのまろやかな味がさらに俺の好みにジャストミート。
「マジ? よかった」
主婦が・・・・・・いやいや一馬が目の前で安心したように笑ってる。隣の英士は渋い顔してるし。
何だよ、いつものことじゃん。
「英士も何か食べるか?」
「・・・いいの? じゃあ野菜の甘酢あんかけ貰うよ」
「あぁ」
こうやって一馬が英士に勧めて、英士が一馬からもらう。
ここまでがいつものこと。でもって一馬の弁当が美味いのもいつものこと!
あぁ俺って幸せ!
「一馬の手作り弁当ってマジで美味いよなー! 絶対おまえイイ嫁さんになるぜ!!」
笑顔でドガンッと爆弾を落っことす。



目の前の主婦は「嫁さんって何だよ」とか文句言ってるけど聞いてません!
だってそんな一馬の後ろで藤代がおあずけ食らった犬みたいにこっちを見てるし!
その隣では渋沢も一馬を見てるのか弁当を見てるのかわかんねーけどこっちを見てるし!
左隣では椎名と黒川がまじめな顔して一馬と弁当を見てるし!
右隣では桜庭と上原と鳴海がうらやましそうに俺と英士を見てるし!
後ろからはたぶん風祭と水野が俺たち三人をじーっと見てるし!
選抜中の視線を独り占め! (本当は一馬が集めてるんだけどさ、一馬は俺のだし!)



あぁなんて楽しいんだ!!



「なぁ一馬、この前のチキンカレーはどうした?」
俺の問いに一馬はオムライスを食べながらうなずいて。
あ、俺にも一口。
「あぁ、あれなら冷凍してまだ残ってるけど」
「先週の休みに一馬が作ったカレー? あれはインスタントのルーじゃなくて、ちゃんとスパイスを使ってたっけ。本格的で美味しかったね」
お。何だかんだ言って英士も乗り気じゃん。
「俺としては食後のラッシーも美味かった!」
ラッシーって言っても犬じゃない。
一馬特製のヨーグルトと蜂蜜とレモンのジュース。カレーにぴったり! おまえマジでスゴイって!
「じゃあまた食べに来る?」
「よっしゃ! じゃあ今日な、決定!」
「あとで家に電話入れなきゃね」
携帯ワンプッシュでお泊りオッケー。一馬と英士は若菜家で完全フリーパス。母さんなんかもう自分の息子だと思ってんじゃねーの?
ま、ということで。



「楽しみだなー! 一馬の美味しい手料理!!」



嫉妬と羨望のまなざしを一気に集めて!
あぁなんて楽しいんだ!



やっぱ一馬! おまえ最高!!





2003年1月18日