036:きょうだい





Q:『山吹の覇者』についてどう思いますか?

それはについてということではなく、あくまで『山吹の覇者』についてということか?
・・・・・・あぁ、判った。『山吹の覇者』についてだな。ならば俺も『不動峰のキング』としてその問いに答えよう。
『山吹の覇者』は統治者として必要なものを全て備えていると思う。
頭脳や腕力は言うまでもなく、支配力や人を見る目もあるし組織の長に立つには適任の人物だ。
とりわけ奴の一番の特徴は、あの“カリスマ”だな。
『山吹の覇者』として放つ威圧感や包容力、それに魅入られた学校が奴の傘下に入っているのだろう。
むしろ組織『山吹』は奴のカリスマによって成り立っていると言っても良い。
無論、俺も負ける気はないがな。
奴の裁定は常に公平だし、問題処理能力については統治者の中でも『青学の三強』の乾と一・二を争うだろう。
同じ統治者として学ぶものも多い。
だが奴は『山吹の覇者』だ。つまり俺にとっての奴は常に敵だということだ。



Q:『』についてどう思いますか?

それは『山吹の覇者』についてではなくて、君自身についてということですか?
・・・・・・あぁ、判りました。でしたら僕も『観月はじめ』としてお答えしましょう。
君はいたって普通の少年ですよ。頭が並外れて良く、運動神経も発達していて、あの綺麗過ぎる顔がなければの話ですが。
僕のデータから見ますと平日の昼食はたいてい学校のカフェかコンビニ等で買ったものですね。
ほとんどの場合が千石清純、またはその他テニス部員と食べています。
授業も真面目に出席しているようですし、『山吹の覇者』として仕事をしているとき以外は普通の中学生と変わらない生活をしていると思いますよ。
以前に一度オープンカフェで食事をご一緒したのですが、話題も豊富で楽しかったですしね。
まぁ僕たち二人が揃えば自然と話す内容は仕事のことになってしまいますが。
怒ったりするところは殆ど見たことがありませんし、温厚な人物ですよ。
きっと出会いと現在のポジションが違えば親友にもなれたんじゃないかと思いますね。



Q:『山吹事件』について何かご存知ですか?

「『山吹事件』? それってたしか去年、僕らが二年生のときにあったやつでしょ? が解決したっていう」
「『不動峰のキング』も橘ではなく、『聖ルドルフの女王』も観月でなかったね。そのときは俺たちもまだ『青学の三強』ではなかったし、手塚が一人で『青学の主』を名乗っていたころだ」
「詳しいことは知らないけれど、たしか組織『山吹』の人間が総動員されたって話だよね」
「当時高校二年生だった生徒が都内の中学生に見境なくナイフで傷を負わせたらしい。手塚もそのときは部活にも出ずに『青学の主』として都内を走り回っていたよ」
「ついに山吹中の生徒が被害に遭ったことでが一気に動いたんだよね」
の統治下である学校、組織『山吹』の全生徒を総動員して犯人を挙げたらしい」
「珍しいね、は基本的に一人で動いて一人で解決するのに」
「それほど頭に来ていたんじゃないかな」
「だけど僕たちが知っているのもそれくらいだよね。あくまで事件の概要くらいしか一般の生徒には知らされなかったし」
が組織『山吹』の全生徒を投入したことから『山吹事件』の名がついたらしいよ。俺の調べでも判っているのはそれくらいかな」



Q:『山吹事件』について何かご存知ですか?

――――――ノーコメントだ。あの犯人は高校生とはいえ『氷帝』の傘下の高校だった。
あのときほど『氷帝の帝王』をやっているのを嫌だと思ったことはなかったな。
他の統治者の視線よりも、何より『山吹の覇者』の行動が恐ろしかった。
もう二度と奴の傘下の生徒に手を出すなと、組織『氷帝』の全生徒に伝えたほどだ。
だがそれは俺だけではない。『青学の主』だった手塚も、前『不動峰のキング』も前『聖ルドルフの女王』もみんな指示したと思うぜ。
それほどあの時の『山吹の覇者』の行動は凄まじかったんだ。



Q:『山吹事件』について知っていることを教えて下さい。

・・・・・・・・・あれは統治者が一般的に行う制裁ではなく、むしろ“粛清”と呼ぶのに相応しかった。
あれほどまでに激昂した『山吹の覇者』を・・・・・・・『』を見たのはアレが初めてだった。
むしろ最初で最後になってほしいと思っている。
は常に『山吹の覇者』としては一人で行動し、他者に助けを求めたりすることは殆どと言っていいほどない。
だがあのときは違った。
は自分の統治する都内5分の1の学校の生徒すべてを使って犯人を探し出した。
・・・・・・・・・今でも覚えている。あのときのの様子は。
静かに怒っているのかと思えばいきなり笑い出し、その後は無表情のまま組織『山吹』に命令を下した。
あれ以来俺は組織『青学』傘下の学校には、組織『山吹』の生徒に手を出すなと伝えたほどだ。
はやはり『山吹の覇者』なんだと実感した事件だったな。



Q:『山吹事件』に立ち会った者としてのお話を聞かせて下さい。

立ち会ったって言ってもさぁ、俺は電話番してただけだし。・・・・・・ん? 何でっての命令だったからだけど?
あのときのは完璧に壊れてたよ〜。だって急に笑い出したと思ったら目はもう据わりまくってたし!
たまたま一緒にいた俺のことも『千石清純』って呼んだんだよ? いつもみたいに『キヨ』じゃなくてさ。
あのときのの台詞は今でも覚えてるよ。
『組織『山吹』の全生徒に告げる。送ったファックスに書いてある人間を必ず捕まえろ。俺の前に引きずり出せ。見つけた者には何でも好きな褒美を取らせてやる。―――――――行け!』
・・・・・・・・って!
東京の中学生の5人に1人は組織『山吹』のメンバーなわけじゃない? それに高校生も加えてさ、全員がの命令に動いたわけよ。
結局は指令から2時間で犯人も見つかって、駆けつけたが判決を下して成敗したんだけどね。
・・・・・・・・・・・その内容は知らない方がいいと思うよ。
でも犯人は鑑別所に送られたし、もし出てきたとしてももう関東じゃ暮らせないね。が許さないから。
とにかくあのときのはものすごく怖かったってこと。
まぁそれでこそ俺たちの組織『山吹』の長なんだけどね。



Q:『山吹事件』の当事者としてのお話を聞かせて下さい。

「・・・・・・・・・俺もまだまだガキだってことだよ」





2002年12月14日