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034:手を繋ぐ





「もうすっかり冬になったわね」
吐き出した息が白くなるのを見て少女が言った。
12月になれば5時とはいえすでに暗く、校舎の窓からもれる蛍光灯の光のみが道を照らして。
「テニス部が気になる? 元部長さん」
「・・・・・・いや、アイツラならきっとしっかりやってるだろう」
「そうだといいわね」
小さく笑う少女に、少年は微かに笑って。
そして帰る、帰り道。



黒の学生コートは上半身を温めはするものの、スカートから出ている足までは温められない。
ただでさえ指定の制服のスカートは短いというのに。
寒そうに吐く白い息に少年は眉を顰めた。
そして。
「・・・・・・・・・手塚?」
少女が首を傾げた。突然の少年の行動の意味が判らなくて。
「風邪を引くよりはマシだろう」
「いや、嬉しいけど」
差し出された手袋を受け取って、手にはめてみる。
ちょっと大きくて、まだ温かくて。
少女はほんのりと笑った。
「ありがと」
だけど片方だけ少年に返して。
「半分だけ、貰っておくわ。手塚も風邪なんて引いたら困るしね」
「だがクドウが風邪を引いても困るだろう」
「いいの、片手だけで十分だから」
大きな手袋と、その優しさと。
浮かべられた笑顔があまりに柔らかくて、少年も返された手袋を右手にはめた。
温かく包まれて。
少女は、右手だけが寒くて。
少年は、左手だけが寒くて。



触れ合った手を、ぎこちなく絡ませた。



少しだけ頬を紅くして微笑んだ少女に、少年は握る手に力を込めて。
ほら、もう寒くない。





2002年12月6日